始まりは母の一言

 

「聞こえが悪いんじゃないの?」

中学2年の頃。
リビングでくつろいでいたら、母からいきなり言われた一言。

思ってもみなかった言葉に「?」と、ポカンとした顔をしたことが、昨日のことのように思い出せます。

そりゃそうでしょ。
「耳が悪いんじゃない」なんて、そうそう言われるもんじゃない。

 

今の時代はスマホなどの発展で耳を悪くしている人が増えているようだけれども、当時はウォークマンがあるぐらいで、しかもそこまで皆が持っているわけでもなし。

中学生としたら尚更。
耳を悪くする要因がない。

 

「何をいきなり言っているんだ!?」と言葉をなくす私に母は、だいぶ前から聞こえていないのではないかと思う出来事があったとか、音に反応していないとか…びっくり仰天な、母のここ数日の観察結果をつらつらと述べました。

そんな風に見られていたのかと、これまたびっくり。

良く分かっていなかった私ですが、数日後には父の車に乗って病院(耳鼻科)を受診。
受診するときになってようやく、母の真剣度と「マジで耳が悪いのか」というリアル感がじわじわと。

 

母の悪い予感が的中し、病院の検査で「高音が聞き取りにくくなっていますね」との診断を受けました。

当時の私としては、思いがけない言葉にびっくり。
最初は、他人事のようにただただ驚くばかりでした。

だって、耳が悪くなっているなんて、自分ではまったくわからなかったもの。

でも不思議なもので、自分の耳が悪いとわかると、それまであまり気にしていなかった耳鳴りが気になる様に。
無意識って怖い。

「これが耳鳴りで、ずーっと一生聞こえるのか!?」と確認してしまうと、もう静かな日々が思い出せない。
ちょっと、プチパニック状態になったのは確かです。

まぁ、意識するのとしないのでは違うので、半日ぐらいで落ち着きましたけど。

それ以後、耳鳴りは私の日々の当たり前の一部となっています。

 

結局、最初の診察で医者から言われたのは

「どうなるかわからない」

という、不安にしかならない言葉。

定期的に検査して、このまま酷くなるのか、それとも悪くならないのかを見ていきましょうという、打つ手なしの対応に、当時まだ中学2年生だった私は大変なショックを受けました。

しかも、大きな音は極力避けるようにといった制限まで。
大きな音を聴く事で、難聴が進行しやすくなるというのです。

 

…ということで。

その日からウォークマンや映画、ライブ、カラオケなどが制限されるようになりました。

花の10代。
これから青春を満喫しようとする矢先に、これは相当なショックだったのは間違いない。

帰りの車の中では、家族の誰もが無言。
あの時の微妙な空気…忘れられないわ…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です