東京都文京区小石川にある慈眼院 澤蔵司稲荷(読み方はじげんいん たくぞうすいなり)は、1620年(元和6年)に傳通院塔頭寺院として開創された、400年以上の歴史ある浄土宗の寺院です。
その開創には不思議な伝承があり、境内の奥にはスピリチュアルなパワースポット霊窟「お穴」があります。
また、澤蔵司稲荷の隣には小説家の幸田露伴、ご近所には著名な劇作家や哲学者、作家などが住んでいた地であり、夏目漱石や石川啄木、菊池寛、樋口一葉、志賀直哉など作家さん馴染みの町です。
目次
・歴史とご祭神・ご利益
・石垣
・参道
・本堂
・霊窟「お穴」
・ムクの木
・御朱印・お守り・ご祈願
・アクセス
・主な行事・お祭り
・近くにある神社・寺
慈眼院 澤蔵司稲荷の歴史とご祭神・ご利益
主祭神は澤蔵司稲荷。
慈眼院の境内に鎮座するお稲荷で、開運・商売繁盛・家内安全・良縁成就・学業成就・交通安全など様々なご利益があるといわれています。
その創建は1620年(元和6年)。
傳通院中興廓山上人により、傳通院山内慈眼院を別当寺として開創されました。
開創のきっかけは、澤蔵司という一僧になって修行した稲荷大明神というのですから驚きです。
当時、傳通院は浄土宗の教えを学ぶ道場で、境内には多くの修行僧のための宿舎がありました。
1618年(元和4年)に澤蔵司と名乗る一僧が浄土教の修学したいと訪ね入門。
澤蔵司はとても優秀で、僅か3年余りで浄土教の奥義を修得してしまいます。
1620年(元和6年)5月のある夜、方丈廓山和尚と学寮長・極山和尚の夢枕に澤蔵司が現れ、実は太田道潅公が千代田城内に勧請した稲荷大明神で、ここに祀ってくれれば長く守護しますよと告げます。
そうして、慈眼院が別当寺となり澤蔵司稲荷が建立され今に至ります。
この話はBS-TBS「むかしばなしのおへや~伝えたい日本昔話~」でも取り上げられ、わかりやすく紹介されています。
ちなみに、澤蔵司が修行中に好んで寄っていたお蕎麦屋さんがあり、澤蔵司が来た日には売り上げ金の中に必ず木の葉が入っていたとか。
その蕎麦屋さんは、傳通院前交差点にある稲荷蕎麦萬盛。
澤蔵司稲荷尊として祀られてからは蕎麦を献じ続け、現在でもその日の初茹(初釜)のお蕎麦は朱塗りの箱に収め奉納されているそうです。
慈眼院 澤蔵司稲荷の石垣
慈眼院 澤蔵司稲荷は、東京メトロ南北線・丸ノ内線の後楽園駅、都営地下鉄三田線春日駅から徒歩でも10分以内と、アクセス良好な場所に鎮座。
途中、源覚寺(こんにゃく閻魔)と月参堂 善光寺を通り、善光寺坂を登っていくと、江戸名所図会「無量山境内大絵図」でも描かれている石垣が見えてきます。
明治の頃におこなわれた道路拡幅工事により少し形は変われども、石組み本体の石材は当時のものとされています。
慈眼院 澤蔵司稲荷の参道
参道の両サイドには、小石川 江戸町火消「な組」や大黒天、お地蔵様、観音様、お不動様、ミニ五重塔など多数の石像や石碑が。
また、小さな祠も数多く置かれており、こちらは行き場をなくして持ち込まれたものだそうです。
手水舎の裏側にはちょっとした小径があり、そこにも小さな社や仏像が。
慈眼院 澤蔵司稲荷の本堂
1961年(昭和36年)に再建された木造の本堂。
本堂の北側奥には御神殿が隣接し、殿内お厨子には太田道灌公の念持仏と伝わる十一面観音像(非公開)と澤蔵司尊像(春季例大祭にご開帳)が安置されています。
本堂の賽銭箱の隣には護摩木と絵馬(見本)。
護摩木にご祈願事を書いたらお三方に奉安し、奉納金は賽銭箱に。
毎月の護摩供修行にて御祈願していただけます。
絵馬は寺務所でいただき絵馬掛にご奉納します。
慈眼院 澤蔵司稲荷の霊窟「お穴」
本堂の右側には、霊窟「お穴」につながる小径。
霊窟「お穴」の石碑の近くには「旧社殿跡」の石碑も。
今の稲荷社殿は南向きですが、以前の社殿は西の伝通院に向いて建てられていたそうです。
霊場という言葉にぴったりな雰囲気の場所。
朱塗りの鳥居に囲まれた小さな社がいくつかあります。
東京名所図会では「東裏の崖下に狐棲(狐の棲む)の洞穴あり」。
新撰東京名所図会には「賽客多く、門前には納幟林立す。東裏の崖下に狐棲の洞穴あり。其の磴道には小形の鳥居列植して門を成せり。」と書かれています。
さらに、江戸名所図会「無量山境内大絵図」にも描かれている、樹齢数百年の樹木に囲まれた「鎮守の杜」です。
鳥居の先にはいつくかの社が置かれており、中でも目を引くのが窪地にある稲荷様。
この窪地は「霊窟」と言われており、ここから狐が出入りしているのだとか!?
ちなみに、「お穴」は小石川植物園内のお稲荷さん(太郎・次郎稲荷)まで続いているという話もあるそうです。
霊窟「お穴」の先にも鳥居と社が続きます。
この鎮守の森の手入れは植木屋さんではなく、本職の木こりの方がされているのだとか。
さらに、ところどころにみられる岩石は富士山の溶岩。
富士山パワーも秘めているのですね。
小高い丘の上にも社。
手前の狛狐は正面を向いているタイプでした。
慈眼院 澤蔵司稲荷のムクの木
傳通院本坊から澤蔵司稲荷へ続く参道の途中にある椋の木(ムクの木)は、江戸時代からある木。
江戸名所図会「無量山境内大絵図」でも描かれており、無量山内の信仰の対象として大切にされてきました。
推定樹齢は400年で、この木には澤蔵司が宿っているとされています。
慈眼院 澤蔵司稲荷の御朱印・お守り・ご祈願
公式サイトでは御朱印の頒布はしていないと記載されていますが、本堂となりにあるご自宅で御朱印をいただいたという話もチラホラ。
また、慈眼院 澤蔵司稲荷ではさまざまなご祈願をおこなっており、そのご祈願料に一律の決まりはなし。
3千円〜を目安にお気持ちに合わせてお納めします。
ご祈願札は毎月1日の早朝に厳修しており、例月大護摩供にて加持。
方除け札、水引がけご神体、身に着ける小さなお守り、交通安全ステッカー、お守りステッカー(転写タイプ)などがあります。
慈眼院 澤蔵司稲荷の詳細
慈眼院 澤蔵司稲荷へのアクセス
- 都営三田線:春日駅A5出口より徒歩7分
- 東京メトロ南北線:後楽園駅8番出口より徒歩9分
- 公式サイト:https://takuzousuinari.com/
慈眼院 澤蔵司稲荷の主な行事・お祭り
- 1月:正月修正会(初詣)
- 2月:初午祭、節分追儺式(豆まき)
- 4月:春季例大祭
- 9月:秋季例大祭
- 11月:七五三詣り
- 12月:越年大護摩
慈眼院 澤蔵司稲荷近くのおすすめ神社・寺
月参堂 善光寺 | 月に一度のお参りを推奨する月参堂。徳川家康公の母君ゆかりのお寺です。 |
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源覚寺(こんにゃく閻魔) | こんにゃく閻魔さまにこんにゃく、塩地蔵さまにお塩を奉納して健康祈願。 |
傳通院 | 徳川家康公の生母・於大の方の菩提寺。有名人のお墓が多数あります。 |
牛天神北野神社 | 御祭神は菅原道真公。授乳している狛犬さんがいます。 |
福聚院 | 小石川七福神の大黒天がご本尊。幼稚園が併設されています。 |
無量山 真珠院 | 開基は初代松本藩主・水野忠清。小石川七福神の布袋尊が祀られています。 |