価格:836円 |
正直、背表紙に記載されているあらすじを読んだ瞬間から、「あっ、好みじゃない」と、読む気がまったくおこらなかった本。
それなりになぜ読んだのかというと、柚月裕子さんの作品だから。
柚月裕子さんの作品では、これまで弁護士や検察を舞台にした本を読んでいるのですが、どの作品もとっても深くて素晴らしい!!
これまでどの作品も裏切られたことがない。
もう、私の中では天才…神の部類に入るぐらいの作家様。
だけれども、仁義系の話には興味関心がなかったので、こちらの「孤狼の血」も正直読む気がしませんでした。
が…
書店を彷徨っていて目につき、映画化もされているということで読んでみることに。
なにせ、柚月裕子さんですから。
仁義系の本に見向きもしない私に、「最後まで読ませることができるかな!?」などとおこがましいぐらいの思いで読み始めました。
で、最後まで読みました。
さすが、柚月裕子先生です。
「孤狼の血」は、主人公・日岡が、ヤクザと癒着関係にあるのではなと噂されている大上刑事の下に部下として配属され、極道世界に関わっていくお話。
この大上刑事自身も「ヤクザですか?」という感じの刑事で、日岡に弾除けとして前を歩くことや、タバコを出したら火をつけるなどなど…部下として求めるものが、ヤクザの舎弟そのもの。
極道の頭とも仲が良く、日岡を連れて歩く。
新人刑事の日岡からしたら、大上刑事のやることなすこと違反だらけ。
実際、「それはアウトでしょ?」という事も平気でやらかしています。
ただ、そのやらかしは、すべて極道社会を円滑に回す、すなわち堅気(一般人)に迷惑をかけないような形にするべくもので、まぁまぁ…きれいごとだけじゃな無理だからねと、読んでいるこちらも「う、うん…」みたいな、なぜか納得させられるものに。
読み進めていくうちに極道社会が少し知れて、その世界の仁義というものがいかにすごいものなのかがわかり、興味深く読んでいけます。
組員の信頼の強さにはびっくりしました。
これは、一般社会人も学んだ方がいいんじゃないと思うぐらいの愚直さ。
外道もいるけど、そうじゃないのはすごいなと。
そんな極道社会でつぶし合いやらもめごとが起こり、それを大上刑事が動いて収めていくわけですが、最後はなかなか大変な状態に追い込まれますつよ。
大上刑事の頼もしさに慣れてきてしまっているので、最後の方になると「ええっ、大丈夫かよ…」とこちらもハラハラドキドキ。
日岡刑事も、最初は「警察官がそんな事をしちゃいけないでしょ!」と憤慨しているのですが、次第に大上刑事に惹かれて染まっていきます。
そして、最後は大上刑事の意志を受け継いだ行動を起こすまでに。
あんなに軟弱刑事だったのに…と。
最後の黒幕のところでバシーンと強い態度に出たときには「立派になったね…」とほろり。
日岡刑事が最後に対決する黒幕は、警察内部の人間。
日岡刑事が大上刑事に元に配属された原因です。
この「孤狼の血」は、極道社会のいざこざだけでなく、警察内部の企みもあったという。
日岡刑事の配属理由の裏に隠された、本当の理由も暴きます。
話のところどころに日誌がありますが、わざわざ削除された文があることにも意味があり。
最後にわかるのですが、「そういうことですか!」とスカッと納得です。
ただの極道社会の取り締まりだけじゃない、キャラクターが魅力的な「孤狼の血」。
さすが、柚月裕子先生です。
今回もおもしろく読まさせていただきました。