ノンフィクション風!下村敦史「ネタバレあり 双紋島の殺人」

下村敦史の小説「ネタバレあり 双紋島の殺人」は、冒頭で7つのネタバレが明示されているメタミステリー。

よくある「読者への挑戦状」ではなく、真相解明のため読者に推理を求めるために刊行された小説…という体で読み進めていきます。

事件に巻き込まれたミステリー作家・三雲梟馬(みくも きょうま)が実際に体験した、嵐に閉ざされた絶海の孤島「双紋島」で起きた未解決連続殺人事件。
の顛末が記されている(あくまでも作中での)ノンフィクションノベル。

冒頭に7つのネタバレが提示されているのにはちゃんと意味があります。

リアルな読者体験に近い形で読み進めていくことができる小説。
一読者として自分も「謎をといてやる」と意気込みながら楽しめた本でした。

下村敦史「ネタバレあり 双紋島の殺人」



目次
・あらすじ
・簡単ネタバレ
・感想
・下村敦史さんの(読んだ)本
 

「ネタバレあり 双紋島の殺人」のあらすじ

物語の冒頭(巻頭)には、7つのネタバレが提示されています。

・島での最初の犠牲者は名探偵
・登場人物の一人は偽名
・島では4人が殺される
・共犯者がいる
・ある章は過去
・ミステリー作家は犯人ではない
・名探偵は素性を偽っていない

事件は、隠された秘宝があると言われている双紋島でのクローズド・サークルミステリー。

双子のように連なる小島は唯一の吊り橋でつながれており、片方には宿泊施設。
もう片方には財宝が眠るとされる水中洞窟「呑まれ穴」につながっている入り口があるのみ。

呑まれ穴は激しい潮流で入ることはできても戻ることができないのですが、嵐の時だけは潮流が収まり行き来できるようになります。
そうしたことから、嵐が来る日を狙って、財宝の謎を突き止めようと考えるダイバーたちが訪れていました。

ミステリー作家・三雲梟馬(みくも きょうま)が小説化した「双紋島の殺人」は、この2回目に訪れた時に起こった事件。

 

双紋島に居るメンバー(登場人物)は以下↓

ミステリー作家の三雲梟馬 ※ペンネームは梟雲三馬(きょううん さんま)
雑誌「裏面世界」の編集長である鈴木
雑誌「裏面世界」のルポライター猿渡
雑誌「裏面世界」の外注カメラマン橘
冒険家を名乗る山田
ミステリーマニアの東堂院
グラビアアイドルの恵那
マネージャーの大岩根
宿泊施設の管理人の栗田

嵐が近づいているタイミングを狙い、双紋島にたどり上陸した一行。

実は、大岩根と鈴木以外は2回目。
前回訪れた際にトラブルが発生したことから、そのお詫びとしての優先枠による訪問。

三雲梟馬もトラブルに巻き込まれた一人で、それが原因で記憶障害を発症。
1時間しか記憶が持たない状態であるため、常に出来事をメモ帳に書き記していました。



 

到着後、天気予報通り嵐に見舞われた双紋島。

猿渡、橘、山田、恵那はさっそく水中洞窟に。
三雲、東堂院、大岩根は見学と付き添い。
鈴木と栗田は宿泊施設に残ります。

ところが水中洞窟にはサメがおり、命からがら逃げてきます。

 

サメがいるのでは財宝は諦めるしかないと、宿泊施設にこもる一行。

が、猿渡の姿が見えないことから部屋に行くと、「本当の目的を知っている。誰にも知られずに呑まれ穴に来い」というメッセージが。
東堂院の姿が見えないことから、東堂院が呼び出したと考え、急ぎ追いかける山田・橘・三雲。

洞窟に入ると絶叫が聞こえ、奥に駆け付けた時には水面に東堂院が浮かんでいました。
そして、東堂院は水中に潜んでいたサメに食べられてしまいます。

 

山田は急ぎ全員を急き立てて宿泊施設がある島に戻ると、殺人犯と思わしき猿渡を閉じ込めるために吊り橋を落としてしまいます。

が、猿渡がいる島には、山田たちの後を追いかけた恵那が。
恵那も一緒に閉じ込めらてしまいます。

その後、宿泊施設では鈴木が殺害され、続いて山田も殺害。

一人でいた三雲が疑われる中、5日目になって迎えの船が到着。
その船とは別に出た人物もいたのですが、それが誰かは不明。
恵那と猿渡の行方、明確な犯人が分からないまま「未解決」の状態で幕を閉じるのでした。

 

三雲は「双紋島の殺人」として、島で起こった出来事を雑誌に連載。
読者から推理を募り、ついには単行本化します。

読者から謎解きの手紙が届く中、真相を知る人物が接触してくるのでした。

※ここから下はネタバレ(犯人名含む)です。




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「ネタバレあり 双紋島の殺人」の簡単ネタバレ

「ネタバレあり 双紋島の殺人」は現実パートと、小説の作中パートの2つで構成されています。

犯人はズバリ東堂院。

 

事の発端は、雑誌「裏面世界」の前身である「黒い噂の事件簿」に掲載された、猿渡が書いたがん治療の記事。

確かなエビデンスもないのに「今のがん治療は、ビジネスのために薬を大量に投与しているだけ」といった内容の記事を掲載したことから、それを信じた読者がガン治療を支える医者を攻撃。
東堂院の兄も狙われ、猿渡が過激な読者の一人に兄の情報を漏らしてしまったため殺されてしまいます。

兄を殺された恨みから、猿渡の殺害を決意した東堂院は、ファンを装って雑誌社に双紋島の情報を送り島におびき寄せます。

水中洞窟側の島にある小屋(証拠隠滅のため燃やしちゃいます)に潜んでいた東堂院ですが、名探偵・山田が東堂院がやろうとしていることを察知し、隣の島と行き来できないように吊り橋を落としてしまいます。

計画をつぶされた東堂院はカッとなり山田を殺害(一人目の犠牲者)。
その現場を見ていた梟雲三馬は海に転落し記憶障害を起こしてしまいます。

この時に双紋島を訪れていたメンバーは以下。

名探偵の山田 → 死亡(死体は発見されていない)
ミステリー作家の三雲 → 殺されかけて記憶障害に
東堂院 → 犯人
猿渡 → 宿泊施設のある島にいて無事
橘 → 宿泊施設のある島にいて無事
恵那 → タイミングが悪く双紋島に行けなかった
動画配信者の2名 → 宿泊施設のある島にいて無事

ちなみに東堂院は、この時、他のメンバーに顔を覚えられないように存在を消していました。
そのため、猿渡・橘・三雲は2回目の訪問の際に気が付かなかったそうです(三雲は記憶を取り戻した際に気が付く)。



 

そして再度、殺害計画を立てて双紋島に。
共犯者として、同じく猿渡に恨みを持つ尾島が、流れ着いて助かったとする山田のふりをして島に乗り込みます。

水中洞窟に呼び出した猿渡を殺害(二人目の犠牲者)すると、東堂院の洋服と取り換えて海に落とし、サメに食わせて入れ替えを隠蔽。
そして、横穴を利用して追ってきた尾島(山田)たちに叫び声を聞かせ、先に宿泊施設がある島に戻ります。

また、恵那が島に隔離されたのは尾島の策。
実は恵那の母も猿渡の記事によって命を落とした犠牲者で、恵那が横やりを入れないようにするためにわざと引き離したのでした。

しかも数日間無事でいられるように、食料を洞窟に置くなどの根回しも。
恵那は呑まれ穴の横穴の先に放置されていた、東堂院が前回の計画で使おうとしていたボートで脱出します。

 

恵那を探しに行くという理由で、山田(尾島)が栗田と鈴木以外のメンバーを外に連れ出したすきに、隠れていた東堂院が鈴木を殺害(三人目の犠牲者)。

さらに夜中。
こっそりと落ち合った尾島を殺害(四人目の犠牲者)。
その殺害理由は、東堂院は犯人に仕立てようとしていた三雲を殺害するつもりでしたが、尾島が「それはやりすぎだ!」と拒否したから。

そして三雲たちが船に乗って帰った後、こっそりと島から離れた謎の人物は東堂院でした。

 

つまり、ネタバレの答えは以下↓

・島での最初の犠牲者は名探偵 → 本物の山田
・登場人物の一人は偽名 → 山田の振りをした尾島
・島では四人が殺される → 本物の山田、猿渡、鈴木、尾島
・共犯者がいる → 山田の偽名を使った尾島
・ある章は過去 → 三雲が見た東堂院が山田(本物)を崖下に落とす(殺害)シーン
・ミステリー作家は犯人ではない → 三雲梟馬(梟雲三馬)は犯人ではない
・名探偵は素性を偽っていない → 本物の山田

 

2回目の事件で記憶をうっすらと取り戻した三雲は、犯人を見つけるために雑誌に連載(だから本物の田中の殺害シーンを書けた)。

単行本になる際には、「一言一句も変えない」という条件を編集部に提示。
1時間前の事も覚えていないことからも、後から何を言ってもそれだけは変えないようにと言づけます。

さらに犯人を炙り出す為、失踪したことにして姿を消します。

三雲の罠に乗せられた東堂院が三雲に成りすましますが、原稿を変えられないことから「7つのネタバレ」を加えます。
読者や編集部に「この条件なら、犯人は三雲以外のこの人しかあり得ない!」という偽の真相(身代わりの犯人)に誘導しミスリードさせるためでした。

最後、姿を隠していた恵那(三雲と連絡を取り合っていた)によってすべて暴かれます。



 

「ネタバレあり 双紋島の殺人」の感想

登場人物の把握がややこしく、久しぶりに二度読み。

7つのネタバレの提示から軽い感じで取り組むミステリかなと思いきや、しっかりとしたミステリーでした。
これも犯人の仕掛けの一つだったのですから「やられた!」です。

事件の真相は何なのか、情報をどう読み解くかというロジックがしっかりと確立されていて、真相がわかった時の面白さは格別でした。

特に読んでいて気なったのが「視点」。
「これはいったい誰が書いてるのかな?」と。

作者の三雲梟馬と一緒に来ている人なのかと思いきや、まるで周囲からは「いない人」扱い。
この居心地の悪さがあったのですが、これにも意味がある大事な伏線だったとは…見事に回収されて恐れ入ったです。

久しぶりに頭を使った、大変面白いミステリーでした。

 

下村敦史さんの(読んだ)本

全員犯人、だけど被害者、しかも探偵 密室&デスゲーム&多重推理ミステリー。犯人だけが生きて出られる、廃墟を舞台にしたデスゲーム。


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