乗っ取り連続殺人!荒木あかね「ちぎれた鎖と光の切れ端」

講談社から出版されている荒木あかねさんの江戸川乱歩賞受賞第一作、長編ミステリー小説「ちぎれた鎖と光の切れ端」。

アガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」と「ABC殺人事件」をオマージュしたようなミステリー小説です。

帯に「Z世代のアガサ・クリスティー」と宣言するだけあるなぁと思う面白さ。
2部構成550ページを超える結構なボリュームでしたが、夢中になって一気読みしてしまいました。

なんとも変わっているタイトルも、最後にしっかりと納得する意味で回収されています。

荒木あかね「ちぎれた鎖と光の切れ端」



目次
・あらすじ
・簡単ネタバレ
・感想
 

「ちぎれた鎖と光の切れ端」のあらすじ

第一部と第二部に渡って展開されるストーリー。

第一部の主人公は、ルームメイトの先輩の復讐として、加害者6名の殺害を計画する大学生の樋藤 清嗣(ひとう きよつぐ)。

復讐のターゲットに近づき仲良くなります。

フリーターの橋本 亮馬(はしもと りょうま)。
引っ越し業者の大石 有(おおいし ゆう)。
サラリーマンの竹内 隼介(たけうち しゅんすけ)。
区役所職員の浦井 啓司(うらい けいじ)。
プロレスラーの加蘭 結子(からん ゆいこ)。
医療事務の仕事をしている伊志田 千晶(いしだ ちあき)。

浦井の叔母が所有している徒島(あだしま)のコテージに泊まり(7泊)に行くことになり、そこで全員を毒殺しようと計画。

全員を殺したら自分も死ぬつもりで、その計画を書いた遺書と犯行声明(告発文)も用意。
犯行声明は指定した日時に自動でサーバーにアップロードされるように設定していました。

 

漁師に船を出してもらい、徒島に乗り込む7名。
後から、コテージの管理を任されている九城 健太郎(くじょう けんたろう)も合流します。

和やかな雰囲気で過ごすなか、樋藤は唯一の連絡手段となる電話ボックスの回線を切断し、毒入りジュースを出すタイミングを計るのですが、いざチャンスがあってもためらってしまい実行することができませんでした。

ところがその日の夜。
密室状態の部屋で、顔をめちゃくちゃくにされた橋本の遺体が発見されます。

さらに続く連続殺人。

 

数日後、迎えの船が徒島に行くと、そこには無残な殺された方をした(九条を含む)7人の遺体が。
いずれも舌を切り取られていました。

ネットに公開された犯行声明から樋藤が重要参考人として警察に身柄を拘束されますが、樋藤は意識不明の重体で海を漂っていたところを発見されたことから、そのまま入院し詳細は不明なまま。
「樋藤事件」として世間の注目を集めます。



 

第二部は樋藤事件から3年後。
クリーンセンターで働く横島 真莉愛(よこしま まりあ)が主人公です。

真莉愛は家を飛び出すように出てきており、両親はすでに他界、唯一の身内となる兄とは音信不通の状態でした。

また、樋藤事件で殺害された九城は元恋人。
ただ、九城とは別れ話をこじらせ脅されていたため、関係は良好ではありませんでした。

現在は、樋藤が通っていた学校を見に行った時に出会った「兄」と呼ぶ男性のところに、真莉愛が転がり込む形で居候。
兄はとある事故で舌の一部を失くしており、まったくしゃべれないわけではないけれども、会話は筆談でおこなう寡黙な青年でした。

 

そんなある日、真莉愛は仕事中にバラバラ死体を発見します。

数日前に起こった殺人事件との関連から次に狙われる可能性が高いとして、女性刑事の新田と瀬名の護衛が付くことに。

その事件ではすでに3名(倉町・溝口・小林)が殺害されており、倉町以外は第一発見者。
3番目の被害者(小林)を発見した真莉愛が次に狙われると読んでの保護でした。

被害者は舌を切られた状態で発見されていることから、樋藤事件の模倣犯の可能性も疑われていたのでした。

新田と瀬名と行動を共にするうちに、事件の真相に近づく真莉愛。
樋藤事件の現場となった故郷に戻り、そこで自分の知らなかった事実を知るのでした。

※ここから下はネタバレ(犯人名含む)です。




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「ちぎれた鎖と光の切れ端」の簡単ネタバレ

ざっくりいうと、二つの殺意が交わって起きた殺人事件でした。

先輩である紀田陽平の復讐のために殺害計画を立てた樋藤清嗣と、妹である横島真莉愛を守るために殺人を重ねた兄・横島和実。

事の発端は、まだ学生だった橋本・大石・竹内・浦井・加蘭・伊志田が学生の頃に起こした事件。

当時、家庭環境の影響から荒れていた橋本が、大石・竹内・浦井・加蘭・伊志田を誘って薬に手を出し放火するのですが、紀田陽平はその放火の現場を目撃したため集団リンチにあい、逃れるなかの事故で舌を切断してしまいます。

夢も希望も失い学校を去った紀田陽平。
ルームメイトだった樋藤は、橋本・大石・竹内・浦井・加蘭・伊志田への復讐を決心します。



 

一方、威ヶ崎港で漁師をしていた横島和実は、都会から来た九城健太郎と仲良くなります。

ところが、まだ高校生だった妹の真莉愛が九城とこっそり付き合い始め、やがて別れ話が出るようになると関係が悪化。
横島は九条を殺害してしまいます。

おりしも、殺害した日は樋藤たちを徒島に送迎する予約が入っている日。
徒島に連れていく際、こっそり盗み見た荷物から樋藤が殺人を計画しているのを察知し、これを利用することに。

樋藤たちを徒島に送ると、自身の長い髪を切り服装なども取り換え、樋藤たちが見た漁師とは異なる風貌にイメージチェンジ。
キャリーケースに九条の遺体を入れて徒島に運び、船は見えにくい場所に隠すと、何気ない体を装って樋藤たちと合流。
橋本・大石・竹内・浦井・加蘭・伊志田を次々と殺害し、九条が巻き添えで殺されたように演出します。

最後に残った樋藤は横島によって自殺に見せかけて殺害されそうになりますが、逃げるため海に飛び込み漂流されているところを救助。
意識不明の状態で警察に保護されます。



 

そして3年後。
植物状態とはいえ意識が戻る可能性もあることから、樋藤殺害を目論む横島は利用できそうな人間を探していました。

釣りの客として知り合った溝口慧に交換殺人を持ち掛け、溝口の叔父を殺害します。

ところが溝口は殺人を実行せず、逆に録音していた横島との会話をたてに拒否。
叔父の舌を切り取ったのも溝口で、樋藤事件を警察に意識させることで、関係者である横島が溝口に近づきにくくするためでした。

横島は口封じのため溝口を殺害します。

さらに「第一発見者が次の犠牲者になる」という法則を作るため関係のない老婆(小林)を殺害し、妹の真莉愛が警察に保護されるように仕向けます。

それというのも、樋藤事件の被害者である浦井啓司の弟・祐樹が、「樋藤には感謝している」と言った真莉愛を逆恨みし殺害しようとしていたから。

浦井啓司の弟は警察に捕まり、新田刑事によって真相が暴かれることを察した横島は樋藤の病院に押し入って殺害しようとしたところを取り押さえられ逮捕。

その後、樋藤は目を覚まします。

ちなみに、真莉愛が一緒に暮らしていた「兄」は樋藤の先輩である紀田陽平です。



 

「ちぎれた鎖と光の切れ端」の感想

復讐者の計画を狂わせた乗っ取り連続殺人に、二部構成の設定で先が気になり一気読み。

第一章ではハラハラどきどきな皆殺しが展開され、残りのメンバーが少なくなる中で、九条の振りをしている横島が犯人であることは、誰にとっても推理しやすいものだったのではないでしょうか。

だからこそ、一人また一人と殺されていく極限状態にて、2~3人に残った時の行動はどういった形で描くのか興味深く読めました。

それにしても、殺される順番が「心配して出てきた順に殺されるお人好し」とは、これまでにない発想でびっくり。
心理的にわかるような?

 

第二章ではガラリと変わった雰囲気で、第一章の事件がどのようにつながっていくのか不思議で、次々と繋がっていくストーリーに夢中になれました。

最後、目を覚ました樋藤によって「ちぎれた鎖と光の切れ端」のタイトル回収がしっかりされていたのはお見事でした。

過去の因縁を断ち切り、わずかな救いをかき集めている…そうした意味があったんですね。



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