命がけの自白合戦!下村敦史「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」

下村敦史さんの小説「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」。
2026年9月に幻冬舎出版社から文庫化された密室&デスゲーム&多重推理ミステリーです。

社長室で自殺した社長・志賀川と、生前の繋がり(因縁)があった7人が廃墟に集められ監禁。
「社長を殺した犯人だけを生きて帰す」と告げられた7人は、命がけの自白合戦を繰り広げます。

タイトル通り、登場人物の誰もが犯人で被害者、そして謎を解く探偵。

誰もが死にたくないので、必死に自分の行為を罪に仕立て、他の人の罪を論破していく、なんとも滑稽なデスゲーム。
監禁事件の裏には、巧妙に隠された殺人事件もあり。

下村敦史「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」



目次
・あらすじ
・簡単ネタバレ
・感想
・下村敦史さんの(読んだ)本
 

「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」のあらすじ

事の発端は、SIKAGAWA社の電動自転車ラピドの不具合で死者が多数でたことから、製造会社社長の志賀川が世間から猛バッシングを受け、社長室で自殺してしまったことから。

志賀川社長の関係者7名が謎の手紙で呼び出され、山奥の廃墟へと誘導され閉じ込められます。

神嶋…フリージャーナリスト。糾弾記事でSIKAGAWA社を叩く。
千場…遺族代表。実はラピドの事故とは無関係。
倉持…元運転手。偽装した志賀川社長の音声データを作って売る。
林…社長室があるフロアの清掃員。志賀川社長の首吊り第一発見者。社長室で盗撮。
志賀川加奈恵…未亡人(妻)。不倫をネタに脅されていた。
竜胆…営業部長。夫人と不倫の関係。
石和田…開発部課長。週刊正義に告発文を掲載。不具合のデータを握りつぶす。

 

閉じ込められた部屋は、志賀川社長の社長室そっくりの内装に間取り。

廊下を監視できるモニターはもちろん、プレジデントデスクのところには志賀川社長の自殺を再現したダミー人形が置かれるなど、すべてそのまま再現されていました。

扉は施錠されて監禁状態になり、正体不明の何者かがスピーカーを通して「(時間内に罪を告白し)社長を殺した犯人だけを生きて帰す」と宣言。

以後、7名を呼び寄せた正体不明の人物はゲームマスターと呼ばれます。

 

当初は脱出する方法ばかりを話し合っていたメンバーですが、ゲームマスターが毒ガスのようなものを部屋に流して脅したことから、その本気度を察知。
神嶋が罪の告白をしたのを皮切りに、我も我もと罪を告白していきます。

とはいえ、神嶋の「自分の記事が自殺を促した」など、それらの罪の内容は間接的なものばかり。
ただ、その告白からさまざまな事実が浮かび上がってきました。

誰もが助かるために犯人になりたいので、誰かが罪を自白すれば、誰かが自白の穴を指摘する状態。

やがて、林の「自分が殺した」と直接手を下したと告白。
間接的な罪の告白から一転、殺人の罪の告白に。

林の殺害方法の穴をみつけ、それを補填しながら加奈恵、倉持、石和田の純に便乗していきます。

 

途中、トイレの近くに見知らぬ男の子が出現するという不可思議なことが発生。

しかも、神嶋にこっそりと渡したメッセージには「竜胆に全員を殺させろ」と書かれています。

さらに男の子は忽然と姿を消すのですが、それに構わず7名は、罪の告白とトリックを繰り広げます。



 

そんな中、殺害する動機がない神嶋が「実はゲームマスターとグルで、犯人を見つけるためにいる。ゲームマスターの本当の目的は復讐で、そいつだけを殺すのが目的だ」と告げたことから一転、皆が自分の自白を否定し始める状態に。

神嶋が本当にゲームマスターと通じているのか悩みつつ、メンバーは最終的に以下のように下します。

自分が犯人…竜胆、千場
自分は犯人ではない…倉持、林、加奈恵、石和田
どちらともいえない…神嶋

 

審判の時間になると、ゲームマスターが最初に宣言していた通りに犯人だけを生かすと宣言。

個室となるトイレを利用し、選ばれた千場に「君が犯人だから生かす」とガスマスクが渡されますが、吹き出す毒ガスから逃れようとトイレの扉をこじ開ける他のメンバー。
壮絶なガスマスク争奪戦が繰り広げられます。

 

と、神嶋が「ジエンドだ」と合図を出すと扉が開き、そこにはSIKAGAWA社の社員と警察が。

実は、廃墟監禁惨殺事件で生き残った神嶋を見つけた探偵を中心に、神嶋からの証言をもとにした再現劇でした。

 

後は警察に任せると後にする探偵たち。

神嶋役の探偵が事務所に戻ると、そこに本物の神嶋が訪問。
ゲームマスターの正体と志賀川社長の殺人について語るのでした。

※ここから下はネタバレ(犯人名含む)です。




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「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」の簡単ネタバレ

志賀川社長の死から始まった今回の廃墟監禁惨殺事件。

始まりとなる志賀川社長の自殺は自殺に見せかけた他殺。
殺されたのは志賀川社長ではなく、社長の双子の兄弟である恭二です。

恭一の双子の恭二は素行不良で家を出ており、ずっと没交渉状態。
職業は探偵です。

自分の顔とそっくりなのを逆手にとって、恭一のフリして風俗店に入る姿を撮らせて夫人を脅迫していた恭二。

恭一がお金を振り込んでいると知るや、今度は恭一のフリしてスキャンダルな写真を捏造すると脅迫。
お金をむしり取っていました。

 

恭二は恭一の財産を狙っており、そのために夫人の離婚を狙った脅迫と、恭一に殺害予告に近い脅迫を執拗に送っていました。

そして精神的に追いつめられていた恭一に、自分が変わってやると持ちかけるのですが、恭一はそれを逆手にとり入れ替わりで殺害。

社長室で自殺したいとして見つかったのは、恭一の格好をした恭二でした。

 

恭一は入れ替え後に整形で顔をいじり、誰が自分を殺そうとしていたのかを探るため、自分を陥れた7名を廃墟に集めます。

スピーカー越しに話を聞き、全員を毒ガスで殺害。
遺体にガソリンを撒いて火を放ちますが、鎮火後に遺体を埋める際に、遺体が一つ足りない事に気が付きます。

遺体を焼いてしまったため、逃げたのが誰か分からずじまいでしたが、焼かれて埋められていた六名の他殺死体を警察がみつけ、その身元をニュースで報道されたことから神嶋と判明。

神嶋を探し出し、探偵として接触したのでした。

 

神嶋が助かったのは、部屋にあった模造剣で殺害してガスマスクを奪い、遺体を山にして隠れ、恭一がガソリンを巻いている時に逃走したから。

また、再現劇の最中に男のが乱入したのは神嶋の差し金。

社員の子供である男の子に「竜胆に全員を殺させろ」と書かれたメッセージカードを持たせたのは、ガスマスク争奪戦による殺害を隠すため。

中心となって再現劇を信仰する神嶋役の志賀川社長に渡したのでした。

 

つまり、志賀川社長も神嶋も、どちらも犯人であり被害者、そして探偵。

お互いが口を閉ざす事にしたのでした。



 

「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」の感想

生き残るために自分が犯人だと証明する、前代未聞の逆転設定が面白いミステリーでした。

罪の擦り合いではなく、罪の奪い合いってなかなかない(笑)。

7人が告白する罪は、無理やりこじつけているのもあれば、そうでないのも。

しかも、どんどん嘘がばれて…社長が一番の被害者であることが判明。
そりゃ、殺したくもなりますわと同情しちゃいました。

隠していた嘘が次々と明らかになり、モニターを通して聞いていた志賀川社長ははらわたグツグツ状態だったのでは?

 

そして、全員が犯人・被害者・探偵と、見事にタイトル通りだったのには脱帽。

志賀川恭二の殺害と廃墟に監禁した犯人は志賀川社長。

生き残るために竜胆、千場、倉持、林、加奈恵、石和田を殺害したのは神嶋。

まさに共犯関係となって終わったわけですが、そこまで後味の悪さを感じなかったのは、殺された面々のやっていた事がなかなかにひどかったからかな?

廃墟監禁惨殺事件が誰かの復讐のために行われたのではなく、誰が自分を殺そうとしていたのかを知るためだったとは。
これまでにない動機で面白かったです。

 

下村敦史さんの(読んだ)本

ネタバレあり 双紋島の殺人 冒頭で7つのネタバレが明示されているメタミステリー。絶海の孤島で起きた未解決連続殺人事件です。


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