東京タワーと芝公園の隣に鎮座する増上寺(読み方はぞうじょうじ)は浄土宗の七大本山の一つで、室町時代から続く格式高いお寺。
東京上野にある東叡山寛永寺(天台宗)と同じく徳川将軍家の菩提寺でもあり、正式名称は「三縁山 広度院 増上寺(さんえんざん こうどいん ぞうじょうじ)」です。
大晦日に毎年放送されるNHKの年越し番組「ゆく年くる年」では定番になっていることからも、多くの日本人がその名に聞き覚えがあるのではないでしょうか。
そんな増上寺の大門から大殿本堂に至る道のりは、穢土(えど)から極楽浄土に至る世界が表現されています。
三門をくぐり、煩悩を解脱し大殿へと向かうと、西方極楽浄土を表現した大殿にご本尊・阿弥陀仏が鎮座しています。
増上寺でのお参りでは、大門をくぐって山門(三解脱門)へと進み、金堂の大殿、そして徳川家康が戦の時も携えていた「黒本尊」を安置している安国殿の順番で参拝します。
また、増上寺の境内は広く、他にも見どころがたくさんあります。
目次
・歴史とご本尊・ご利益
・参拝①大門
・参拝②三解脱門(三門)
・参拝③参道
・参拝④大殿
・参拝⑤安国殿
・見どころ①西向聖観世音菩薩
・見どころ②徳川将軍家墓所
・見どころ③宝物展示室
・見どころ④熊野神社
・見どころ⑤黒門
・御朱印・お守り・おみくじ
・アクセス
・主な行事・お祭り
・近くにある神社・寺
増上寺の歴史とご本尊・ご利益
宗派は浄土宗。
ご本尊は阿弥陀如来・南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)です。
1393年(明徳4年)に浄土宗第八祖・酉誉聖聰(ゆうよしょうそう)上人によって、江戸貝塚(現在の千代田区平河町付近)の地に、浄土宗正統根本念仏道場として創建。
最盛期の頃は120以上の堂宇、100軒を越える学寮がある広大な寺院で、3,000人以上の学僧が修行されていたそうです。
1590年(天正18年)になると徳川家の菩提寺に選ばれ、1598年(慶長3年)に現在地に移転。
徳川家康公の手厚い保護を受け、家康公の葬儀もこちらでおこなうように遺言が残されるほどでした。
ちなみに、6人の将軍(2代秀忠公、6代家宣公、7代家継公、9代家重公、12代家慶公、14代家茂公)と各公の正室5名(崇源院や皇女和宮さまなど)と側室(桂昌院など)、歴代将軍の子女多数の墓所が設けられています。
増上寺の参拝①大門
増上寺の本堂へは、最寄り駅である都営大江戸線・浅草線大門駅A6出口を出た、増上寺にまっすぐと続く大通りにある大門から。
車が通る大通りをまたいで建つ大門は、増上寺の一番外側の門になります。
さらに、大門から三門までの距離は約108間。
三門をくぐり108の煩悩から解脱することを表しています。
増上寺の参拝②三解脱門(三門)
正式名称は三解脱門。
増上寺の中門になります。
煩悩から解脱し覚りを開くための三種の修行(空門・無相門・無願門)の三門を三解脱門といい、通称「三門」とも呼んでいます。
1611年(慶長16年)に建立された国の重要文化財で、東日本最大級の大きさを誇るといわれています。
二階内部(非公開)には、釈迦三尊像と十六羅漢像が安置されています。
2024年(令和6年)より半世紀ぶりの大修理(改修工事)をおこなっており、修理完了は2032年(令和14年)11月の予定となっています。
増上寺の参拝③参道
三解脱門の先には、緑豊かな境内。
三門から大殿まで伸びる参道の距離は約48間(1間はたたみ約1畳分)。
「48」という数字は阿弥陀仏の48願のこと。
悟りを開くために叶えなければならない「誓願」の数です。
参道の左側にある水盤舎は、もと清揚院殿(家光公三男・綱重)の御霊屋にあったもの。
1978年(昭和53年)に現在地に移築されました。
まずはこちらで手と口をすすぎ、清めてからお参りするのが基本作法です。
右側には鐘楼堂(しょうろうどう)。
鐘楼堂の大梵鐘は、7回の鋳造を経て完成した江戸三大名鐘の一つです。
そして、参道から大殿前に至る途中にある階段は18段。
阿弥陀仏の本願、第18願です。
増上寺の参拝④大殿
石段を上った先にある大殿(だいでん)は、1974年(昭和49)に再建された本堂。
東京タワーを背景にした大きなお堂で、地下に増上寺宝物展示室、1階に檀信徒控室、2階に本堂、3階に道場とあります。
大殿に登る階段は25菩薩をあらわす25の階段となっています。
本堂に安置されているご本尊阿弥陀如来の両脇壇には、高祖善導大師と宗祖法然上人の御像が祀られています。
お参りの仕方は、御本尊様の前で合掌一礼をし「南無阿弥陀仏」と十遍お称え。
最後に一礼します。
ちなみに、大殿向かって左側には、講堂・道場の光摂殿(こうしょうでん)と幼少の法然上人像。
光摂殿の大広間に描かれている天井絵は、120名の日本画家による作品。
毎年秋の「みなと区民まつり」に併せて公開されています。
増上寺の参拝⑤安国殿
戦災で焼失した大殿の代わりに仮本堂としていた建物で、新大殿完成の際に、境内北側(新大殿向かって右側)に移転。
老朽化のため、2011年(平成23年)の法然上人八百年御忌記念として再建した増上寺の祈願所です。
本堂中央には、家康公が深く尊崇した霊験あらたかな阿弥陀如来像の秘仏黒本尊(恵心僧都作)が祀られています。
そのご利益は、勝運・厄除け。
お正月、5・9月の15日に御開帳しており、勝運黒本尊祈願会を斎行しています。
さらに、御前立の阿弥陀如来立像、脇陣には家康公肖像画、徳川家御歴代並びに御一門の尊霊の御位牌、皇女和宮さまの等身大の御像等が祀られています。
浄土宗では念仏を大切にされているので、参拝では手を合わせ、可能なら念仏(お十念)を10回称えるといいです。
増上寺の見どころ①西向聖観世音菩薩
西向聖観世音菩薩(にしむきせいかんぜおんぼさつ)は、鎌倉幕府の執権・北条時頼公が観音山(現東京タワー)に辻堂を建て、鎌倉街道(現六本木方面)に向けて安置した石像の観音さま。
子供の無事成長・身体健全、あるいは水子のご供養のために建てられました。
江戸33観音札所の第21番霊場でもあり、たくさん並ぶ千躯子育地蔵菩薩は圧巻です。
※西向聖観世音菩薩の詳細はこちら
増上寺の見どころ②徳川将軍家墓所
二代秀忠公・六代家宣公・七代家継公・九代家重公・十二代家慶公・十四代家茂公の6人の将軍をはじめ、崇源院(二代秀忠公夫人)や皇女和宮さま(十四代家茂公夫人)など5人の正室、三代家光公側室桂昌院(五代綱吉公実母)など5人の側室、歴代将軍の子女多数が埋葬されています。
増上寺の見どころ③宝物展示室
徳川家康公の没後400年を記念して開館。
常設展では英国ロイヤル・コレクション所蔵の「台徳院殿霊廟模型」の他、増上寺所蔵の宝物が展示されており、たまに企画展が開かれています。
増上寺の見どころ④熊野神社
1624年(元和10年)に、第十三世正誉廓山上人が熊野権現を増上寺鎮守として東北の鬼門に勧請。
増上寺では、「熊野」は「クマノ」ではなく「ユヤ」権現と呼んでいます。
増上寺の見どころ⑤黒門
三解脱門(三門)向かって左側に建つ黒門は、三代将軍家光公の寄進で建てられた、増上寺方丈の表門であった旧方丈門。
現在は通用門として使われています。
こちらからも本堂に行くことができ、慈雲閣(開山堂)や経蔵があります。
増上寺の御朱印・お守り・おみくじ
御朱印やお守り、おみくじは安国殿にて授与。
お守りの返納も安国殿です。
また、御朱印は安国殿の他、大殿地下1階の宝物展示室入口でもいただけます。
安国殿で授与されている御朱印は黒本尊、南無阿弥陀仏、阿弥陀如来、西向聖観世音菩薩。
宝物展示室入口は、皇女和宮、五百羅漢、台徳院殿の御朱印です。
オリジナルの御朱印帳は、黒地にメタリックレッドの紗綾形の文様が施されたデザインです。
また、月単位で釈尊十大弟子の御朱印、期日限定で徳川将軍霊廟特別御朱印などが授与されています。
増上寺の詳細
増上寺へのアクセス
- 都営地下鉄三田線:御成門駅より徒歩3分
- 都営地下鉄三田線:芝公園より徒歩3分
- 都営地下鉄浅草線・大江戸線:大門駅より徒歩5分
- 東京メトロ日比谷線:神谷町駅より徒歩10分
- 公式サイト:https://www.zojoji.or.jp/
増上寺の主な行事・イベント
- 1月:正月初祈願、正五九黒本尊祈願会他
- 2月:節分追儺式、円山稲荷祈願会、涅槃会他
- 3月:春彼岸
- 4月:御忌大会、潅仏会(花まつり)、ふれあいフェア、地蔵尊大法要
- 5月:景徳祭、正五九黒本尊祈願会
- 7月:増上寺七夕まつり、地蔵尊盆踊り他
- 8月:はさみ供養、広島・長崎原爆殉難者追悼会、平和祈願会他
- 9月:正五九黒本尊祈願会、秋彼岸
- 10月:静寛院和宮奉讃法要、みなと区民祭り、璽書道場
- 11月:五重相伝会、授戒会、十夜法要、七五三ご祈願
- 12月:伝宗伝戒道場、成道会、仏名会、お身拭い式、除夜鐘
増上寺近くのおすすめ神社・寺
芝東照宮 | 四大東照宮の一つ。ご神木は徳川家光お手植えのイチョウ。 |
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宝珠院 | 増上寺の塔頭。徳川家康公の念持仏の弁財天と閻魔大王も安置されています。 |
芝大神宮 | 1000年以上の歴史を持つ由緒ある神社。伊勢神宮からの分霊を祀る「関東のお伊勢様」。 |
蛇塚・如意輪観音堂 | 東京タワーの下、もみじ谷にある金運パワースポット。 |