「#真相をお話しします」で大ブレイクした結城真一郎さんの「難問の多い料理店」。
フードデリバリーを隠れ蓑にした安楽椅子探偵ものの連作短編集です。
「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、怪しげなゴーストレストランのオーナーシェフが依頼するのは探偵業のような情報収集。
どんな難問も華麗に解いてしまうミステリアスな謎解きと報酬に惹かれたビーバーイーツ配達員が、日夜界隈を走り回ります。
文庫本の表紙を飾るのは、なんと「極主婦道」のおおのこうすけさん。
きれいな男性が描かれた表紙から、作中のオーナーシェフがリアルにイメージできて没頭して読めちゃいます。

「難問の多い料理店」のあらすじ
舞台は東京・六本木の雑居ビルにある、超絶美形のオーナーシェフが腕を振るうデリバリー営業のゴーストレストラン。
料理だけでなく謎解き(探偵業)も請け負っており、ビーバーイーツ配達員に依頼を運ぶ仕事を高額報酬で委託。
秘密厳守で漏らした場合は命の保証はなし。
依頼が入ると、配達員が依頼者から話を聞いてオーナーに報告。
情報が必要な場合は宿題として課され、現場で仕入れてきた情報をもとに、店から一歩も出ないオーナーシェフが華麗に事件の謎を解明。
報告書が完成すると、初回往訪時に設定した合言葉を冠したメニューが記載され、依頼者がそれを購入します。
登場するビーバーイーツ配達員は大学生、40半ばの中年男性、シングルマザー、ライター中年男性の4名。
各話で異なるビーバーイーツ配達員の視点で話が進みます。
ちなみに最終話は、依頼した側の視点となっています。
第一話「転んでもただでは起きないふわ玉豆苗スープ事件」
ビーバーイーツ配達員は、生活費を稼ぐ大学生男子。
あるアパートの2階で、タバコの不始末が原因と思われる火災が発生。
出火元となった部屋の住人である大学生・梶原涼馬(かじわら りょうま)は早々に脱出し、他の部屋の住人を避難させたため、アパートの住民は全員無事でした。
ところが、火事で燃え盛る部屋に「ざまあみろ」と呟きながら自ら飛び込んでいく人物を近所の住民が目撃しており、鎮火した焼け跡から涼馬の元交際相手である女子大生・諸見里優月(もろみざと ゆづき)の焼死体が発見されました。
離婚して離れて暮らしている涼馬の父・梶原は、この事件の真相解明の依頼をオーダーします。
第二話「おしどり夫婦のガリバタチキンスープ事件」
ビーバーイーツ配達員は、会社が倒産し配達員を始めた40半ばの中年男性。
依頼者は、自動車事故で死亡した夫の指宿大志郎(いぶすき だいしろう)の妻・頼子。
遺体と対面した際に、夫の左手小指と薬指(指2本)が欠損していることに気づくのですが、その欠損はおよそ半年も前のものであり、頼子はその事実を知りませんでした。
「なぜ夫は指を欠損していたのか?」「なぜ自分に隠していたのか」その理由を知りたいと依頼します。
第三話「ままならぬ世のオニオントマトスープ事件」
ビーバーイーツ配達員は、幼い息子・大翔(はると)と暮らすシングルマザー。
とある集合住宅に空き巣で入った男が逮捕されたのですが、捕まる直前、スマホをみながら「はめられた…」と謎の言葉をつぶやいていました。
その犯人の言葉から、「この空き巣未遂事件の裏で誰かが糸を引いているのではないか」と疑う、空き巣を捕まえた部屋の住民の兄が事件の全貌解明を依頼します。
第四話「異常値レベルの具だくさんユッケジャンスープ事件」
ビーバーイーツ配達員は、ライター業を営む中年男性。
健康診断で運動を勧められた結果、日銭を稼ぐためにビーバーイーツの配達員を始め、その体験談をブログに挙げたところ人気に。
ネタ探しも兼ねて配達員を続けており、今は大きなネタを狙っています。
今回の依頼は、デリバリーの中に注文していないマフラーが紛れ込んでおり、10回連続で同じビーバーイーツの配達員が料理を届けに来た不可思議な現象の解明。
オーナーはライター配達員に、配達員になりきって同じ時刻に同じルートを走る(動画付き)宿題を課します。
第五話「悪霊退散手羽元サムゲタン風スープ事件」
ビーバーイーツ配達員は、売れないお笑いコンビの片割れである若手芸人。
今回の依頼主は、都心のマンションに住む住民。
少し前に、203号室の空き部屋に毎日のようにフードデリバリーの置き配が届き続けるといった不思議な現象が発生。
さらに入居済みの403号室にも届くようになり、その不気味さから住んでいた男性は引っ越してしまいます。
その後、オートロックにしたことで配達がピタリとストップ。
「一体なぜ、誰が、何のために誰もいない部屋へ料理を注文し続けているのか?」と依頼。
第六話「知らぬが仏のワンタンコチュジャンスープ事件」
ビーバーイーツ配達員と依頼人が同じ、第1話の主人公でもある大学生。
同じ配達員のシングルマザーの女性(3話)と、40半ばの中年男性(2話)の協力を得て、自分で注文し自分で受けます。
第1話で謎解きを依頼してきた梶原涼馬の父親は、その後も普通にビーバーイーツを利用しており、この大学生も一度だけ普通のメニューを配達。
実はその日以降、梶原氏が行方不明になっており、警察官の当時の様子を聞きに大学生を訪ねてきました。
警察官から「この人物に見覚えはないか」と見せられたのは、ビーバーイーツのバッグを背負ったある女性の写真。
梶原の自宅へ配達に行った際に、料理を受け取った見知らぬ女性でした。
しかも、マンションの管理人から「お風呂場からルミノール反応が検出された」という話も聞き物騒な予感。
自分が犯人とは疑われていないとは思うけれども、重要参考人にはなっているであろうから、身の潔白を証明する意味でも何があったのかを知りたいとして依頼したのでした。
オーナーからの答えを待つなか、3人の話を聞いていた(聞こえていた)同じ配達員の若手芸人(5話)から、「同じような時期に、女性のお客様から人殺しは請け負っていないのかと聞かれた」と言う話を聞きます。
その女性は梶原の元妻でした。
第七話「今度こそ許すまじ春野菜とインゲン豆の冷製スープ事件」
語り手は、ビーバーイーツ配達員ではなく、彼氏の浮気を疑う琴音。
依頼者側からみたストーリーです。
付き合っている彼氏が、最近始めたビーバーイーツで不審な行動(長時間同じ部屋に滞在している)が見られたことから、2度目の浮気を疑う琴音。
親友の雪穂の勧めでビーバーイーツに依頼します。
訪ねてきたビーバーイーツ配達員から「今、この状況がそうですよね」と言われ納得。
合言葉を決めなくてもいいのではと暗にほのめかす雪穂でしたが、オーナーがどんな解答を出すのか気になった琴音は「浮気男と間抜け女」とします。
数日後、再び前回の配達員が訪問。
「もし浮気だったらどうしたいですか?」との質問に「許しません」ときっぱり。
「浮気相手には?」には「知らないならムカつくだけだけど、知っていての浮気なら殺します」と物騒な回答。
配達員はある提案をし、そのことを口外しないように言うと「それでは、メニューが掲載されるまでお待ちください」と言って去るのでした。
※ここから下はネタバレです。
「難問の多い料理店」の簡単ネタバレ
結局最後までオーナーの正体は不明のまま。
謎に包まれて終わり、お店のルールを破った配達員は姿を消すという…最後までミステリアスな展開で終わりました。
第一話「転んでもただでは起きないふわ玉豆苗スープ事件」のネタバレ
代金は50万。
火災と優月の焼死体は涼馬が犯人。
元交際相手の優月のストーカーに悩まされていた涼馬は、優月を呼び出して眠らせると裸にして浴室に放置。
優月が来ていた洋服を着て優月の振りをして部屋に戻り、服を脱ぎすてると住民を起こして避難したのでした。
すべては涼馬の殺害計画だったわけですが、何かあると感づいた父・梶原が、涼馬の母親からお金を脅し取るために依頼したのでした。
第二話「おしどり夫婦のガリバタチキンスープ事件」のネタバレ
代金は、指輪を取り返す手間賃込みで30万。
夫の大志郎は、東堂凜々花というキャバクラの女性と親密な関係にあり、その女性と会っている最中に結婚指輪を紛失。
頼子は一言でいえば狂気じみた鬼嫁であり、紛失したことを知られたら大変なことになるとパニック状態になり指を切断。
切断したことを隠していたわけではなく、冷え切った夫婦仲やすれ違いの生活で、頼子が全く気が付いていないだけでした。
また、指輪の紛失は東堂凛々花が魔が刺して盗んだと推理。
第三話「ままならぬ世のオニオントマトスープ事件」のネタバレ
代金は、勉強代として20万。
空き巣犯が本当に狙っていたのは、華やかな生活をSNSに投稿して人気を集めている有名インフルエンサー。
インフルエンサーの投稿画像に写り込んだ景色や間取りから場所を特定し盗みに入ろうとしていたのですが、写真は有名インフルエンサーの部屋ではなく、まったく別の部屋で撮られたものでした。
犯人が口にした「嵌められた」とは、偽の情報から違う部屋に侵入してしまったことに気がついたからでした。
第四話「異常値レベルの具だくさんユッケジャンスープ事件」のネタバレ
代金は、覚悟を試す100万。
ちなみに、これはいつまでも購入されずに残っています。
注文していないマフラーが紛れ込んでいたのは、誤配やお店のミスではなく、意図的に仕込んだ物。
すべてはライター配達員がオーナーの正体を暴こうとしたでっちあげでした。
ライター配達員に課した宿題の動画が、でっち上げと断定する証拠。
オーナーにしてやられたライター配達員は、オーナーの正体を暴く記事を書くのをやめます。
が、何者がによって電車のホームから突き落とされるのでした。
第五話「悪霊退散手羽元サムゲタン風スープ事件」のネタバレ
代金は、楽しませてもらったので5万円。
今回の配達は2人の人物によるもの。
203号室の空き部屋に料理を注文していたのは202号室の女性。
近所で一人暮らしを狙った押し込み強盗が頻発していたことから、オートロックを設置してもらうため
403号室への配達注文は大家さん。
男性の前に住んでいた方が孤独死したことから事故物件となり、相場よりも安い賃料が設定されていました。
次の入居者からは正規の家賃を請求できる可能性が高いため、追い出すつもりで203号室の騒ぎに乗じて403号室にデリバリーを注文。
そして、あくまでもオートロックを設置したことで配達が止まったと思われるように、退去の連絡を受けてからオートロックを設置したのでした。
第六話「知らぬが仏のワンタンコチュジャンスープ事件」のネタバレ
代金は10万円。
梶原が密室から消えたのは殺害されたから。
犯人はオーナーで、依頼者は梶原の元妻。
動機は、火事の件をネタに脅迫してきたから。
忽然と消えて見えたのは、バラバラにした梶原の死体をビーバーイーツの配達バッグの中に詰めて運び出したからでした。
配達員の姿をしていれば大きな荷物を抱えていても周囲に怪しまれないという、デリバリーの盲点を突いた完全犯罪。
…と話すのですが、それはすべて依頼者の大学生が期待するストーリーをうまく作って語っているだけ。
オーナーは単に解答例の一つを出しているだけにすぎないと言うのでした。
第七話「今度こそ許すまじ春野菜とインゲン豆の冷製スープ事件」のネタバレ
代金は、浮気男(彼氏)と間抜け女(雪穂)から5万円をいただいているため、依頼者にはお気持ち程度の2千円。
実は、彼氏と浮気していたのは雪穂。
浮気疑惑を晴らすためにわざわざ依頼させ、オーナーからのメニュー(報告書)が提示されたらすぐ二人のうちどちらかが購入できるように、琴音に交代で引っ付いてスマホを見ないように監視していました。
ですが、琴音はオーナーの提案から合言葉を「今度こそ許すまじ」に変えていたため、報告書を受け取り事の真相を知ります。
そして二人はこれ以降、音沙汰なし。
それどころか大学にも姿を見せなくなり、行方知らずとなったのでした。
「難問の多い料理店」の感想
オーナーには配達員の他、手足となって動く配下がおり、作成した報告書が100%真実かどうかの保証はなし。
依頼人が求める都合の良い解釈(偽りの真実)を提供しているだけと、どこまで本当なのか最後までわからず。
なんとも消化不良の感じがする一冊だけれども、ミステリアスなままで終わるといった意味ではいい終わり方だなぁと。
また、オーナーにはかなり権力&お金を持つ陰の部隊(!?)がありそうだから、「都合の良い解釈」というのもうなずけました。
例えば第六話では、実は梶原は男性にしては小柄な人物で、配達バッグに入れるサイズを用意して入れて外に出し、殺されたように偽装。
「下手なことしたら今度こそ命はない」みたいに脅し、奥様への脅迫をやめさせて、別人の戸籍で生きるようにした…なんて解釈もできます。
が、やっぱりオーナーが影の組織(!?)を使って処理していると思わざるを得ない。
4話で正体を醸そうとしたライター配達員が駅で突き落とされて、7話目では店のルールを破った彼氏と雪穂が行方不明になっていますから…。






