禁忌の山でおこなった肝試しを発端とする怪奇と恐怖を描いた、加門七海さんのホラー小説「祝山(いわいやま)」。
2026年夏に橋本愛さん主演で映画化された原作本です。
なんと、呪術や民俗学に造詣が深い加門七海さんの実話がモデル。
足を踏み入れてはならない場所に遊び半分で入り込んだ友人たちに降りかかる異変や災いが描かれており、派手な演出がない分、その怖さはより際立っています。
夜遅い時間に、部屋で一人で読んでいると怖さマシマシ。
「祝山」の本当の意味を知った時、身近な恐怖を感じる一冊です。

「祝山」のあらすじ
ホラー小説家・鹿角南のもとに、中学時代の同級生である矢口朝子から奇妙なメールが届きます。
その内容は、心霊スポットとして知られる廃墟(群馬県の山の中にある製材所跡地)で肝試しを行って以来、不気味な異変や怪奇現象に悩まされている…というもの。
呪術や民俗学、心霊現象に詳しい鹿角に是非話を聞いてほしい、皆が会いたがっているとの相談でした。
スランプで筆がなかなか進まなかったことからも、取材と称して会うことにした鹿角。
怪奇現象の相談の手紙を送った矢口 朝子(やぐち あさこ)と、肝試しに参加したメンバーの若尾 木綿子(わかお ゆうこ)、小野寺 淳(おのでら じゅん)、田崎 正人(たざき まさと)と会います。
不安そうなのは若林だけで、およそ恐怖といった緊張感がない矢口・田崎・小野寺。
廃墟の中で3つの位牌と仏壇を見たこと、帰りに見つけた山神社でお祓いをしたこと、帰宅してからも不可思議な現象が起こっていることを話します。
しかも、変な写真が撮れたというので見せてもらうのですが、ただの撮影時の手ブレでした。
鹿角は一人だけ怯えていた若尾が気になり、別の場所で話を聞くことに。
そこで、仏壇などなかった、さらには小野寺が参道に唾を吐いたという話を聞きます。
数日後、矢口・田崎・小野寺・若尾の様子はおかしくなるばかり。
矢口は異様にハイテンションで支離滅裂なことを言い、以前はあんなにおしゃれに気を配っていたのに今では太りすぎてだらしなくなっているなど、まるで人が変わったかのよう。
田崎は虫に刺されたという腕が一向に良くならず悪化しており、薬を塗っても効果なし。
腕全体に広がっているのか、シャツで隠しているほどです。
小野寺はあれからも単独で訪れ写真を撮っているらしく、鹿角にその写真を送ってきていました。
若尾は怖い夢を見るようになったと。
また、田崎が店長を務める輸入食料品店から廃墟と同じ嫌な気を感じると訴えます。
廃墟があったところを調べてみると、そこは祝山と呼ばれる禁足地(忌み山)であることが判明。
元の名前は「位牌山」。
鹿角にも異変や怪奇現象が現れはじめ、この件から撤退した方がいいと判断し距離をとるのですが、小野寺が廃墟近くでバイク事故を起こし死亡したと聞きます。
さらに、田崎と矢口から小野寺の供養にいかないかと強引に誘われ、軟禁状態の若尾たってのお願いから祝山に同行することになるのでした。
※ここから下はネタバレです。
「祝山」の簡単ネタバレ
肝試しの際に、山から持ち帰ってしまったものが原因であることを突き止めた鹿角は、「同行するから山から持ってきた木材を山に返せ」と持ってこさせます。
それを手に祝山の廃墟に向かうのですが、なぜか山神社に到着してしまいます。
鳥居の前で恐怖に震える3人。
なぜなら、肝試しをした日はきれいな社殿に参拝してお祓いをしたはずなのに、今、目の前にあるのは崩れかけて登れない状態の参道。
鹿角は、真っ青になる3人に持ち出した木材を持たせて鳥居の内側に置いてくるように言います。
が、矢口だけはひどく怯えて拒否。
先に置いてきた田崎が矢口の分を鳥居の奥に投げ入れるという暴挙に出てしまいます。
その後、雨に降られるもなんとか駅までたどり着いた4人。
なぜか矢口は「カバンを忘れた」といって発車間際に降りてしまい、それ以後は行方不明に。
田崎は矢口の失踪直後に数回会ったもののそれ以後は交流が途絶え、勤めていた輸入食料品店やカレー屋さんもなくなりました。
若尾は地元に帰り、そこで結婚しています。
「祝山」の感想
特に目立った怪奇現象はないですが、じわじわと迫りくる怖さがあります。
夜、一人で読んでいると怖さが際立ってくるのは間違いない。
「主人公の鹿角=加門七海さん」で読み進めることができ、心の中のつぶやきがリアルで共感できるところも、フィクションとはまた違った面白さがありました。
また、「祝山」という明るい名称とは裏腹に、入ってはいけない禁足地(忌み山)だなんて…実際にあるのが怖すぎです。
加門七海さん自身の実話がモデルであることからも、祝山は実在していると思うし、禁足地(忌み山)は多数あると書かれていることからも他人事じゃない怖さがあります。
意外と身近にありそうなので、山に近づくときは気を付けよう…。
とはいえ、山の売買が大変だからという理由もわからないでもないけど、ひどい話だなぁと思いました。
製材所の所有者はとんだとばっちりです。
はっきりとした結末(最後)が用意されているわけではなく、派手に驚かす演出があるわけではないので、そこにリアリティーを感じました。
ラストの追い込みは怖かった!
ただ、矢口と田崎の最後が曖昧で、どうなったのかともやっとするところもあり。
特に、あんなに怯えていた矢口が、なぜ急に電車から飛び降りて単独行為に走ったのかは気になる!
その後は山にふらふらと呼ばれて入っていったのかなぁと、勝手に想像しています。






