犯人の目的を推理する!夕木春央「楽園」

「方舟」「十戒」に続く「楽園」。
SNSでも嵐を巻き起こした方舟シリーズと呼ばれる3作目です。

「方舟」のテーマは、誰が生贄になるのか。
「十戒」のテーマは、犯人を見つけてはならない。
そして「楽園」では、殺人犯にならなければ脱出できない。

どれも衝撃的です。

夕木春央さんの方舟シリーズは、「犯人を見つける」ではなく「犯人の目的はなんなのか?」を探る事。
1作目の「方舟」はまだしも、2作目の「十戒」と3作目の「楽園」では最初から犯人が分かっています。

表面の見掛け倒しに騙されて、最後に犯人の狙いが露見する…その時の衝撃度ときたら。
本当の目的を隠すための巧妙な仕掛けが素晴らしすぎるんです。

今回も、犯人の本当の狙いがわかったとたん、世界は180度ひっくり返りました。

夕木春央「楽園」



 

「楽園」のあらすじ(ネタバレ含む)

今回の主人公は、亡き両親から不動産を譲り受けた康之。

所有する物件を管理することのになり、そこで、やたら親切にしてくる賃借人のおばあさん海原さんと、引っ越してきたばかりの沙織と出会います。

康之と沙織はとんとん拍子で仲良くなり付き合うことに。

 

そんなある日、海原さんがメッセージを残して失踪。
海原の遺留品整理の際にみつけたメモから群馬の山奥の謎の物件の存在を知り、旅行がてら沙織と一緒に訪れます。

そこは切り立った岩壁に囲まれた、社会とは隔絶された場所「楽園」。
6名の指名手配犯が隠れて暮らしていました。

探索をはじめた康之と沙織は捕まり、海原さんの息子をかくまうために作ったコミュニティであること、息子さんが亡くなった後も海原さんが外に出れない彼らに変わって必要な生活物質を運んでいたことなどを知ります。

 

海原さんが行方不明になったことで配達人がいなくなり、困った指名手配犯たちは康之と沙織を新しい配達人にしようと画策。

ここを出る条件として二人に、誰か一人を殺し、その様子を動画に撮る事を要求します。
すなわち、外に出れるけれども、弱みを握られているので、海原さんに変わって物質を届ける人になること。

 

凶器はもちろん、一人の時間や部屋の扉に鍵を掛けないなど、殺しやすいようにしてくれる指名手配犯。

どうしたものかと時間が過ぎていく中、指名手配犯の一人が殺害されます。
さらにもう一人も。

沙織が犯人であることに気が付きいた康之に、沙織は楽園を出るための提案をするのでした。

※ここから下はネタバレです。




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「楽園」を読んで

「方舟」「十戒」を読んでいる方なら、沙織が出てきた時点で「あっ、綾川麻衣だ」と気が付くはず。
まさに犯人役の登場です。

これまで、麻衣(沙織)は不可避ともいえる状況で殺人をおかしてきました。
「難儀な人だなぁ」と思ったものですが、今回はそうじゃない。

麻衣(沙織)の本当の狙いが分かった瞬間、あそこから麻衣(沙織)の計画だったのかと驚愕。

作中では、康之は(軟禁されていると知られないように)別の賃借人と電話で話すシーンがたびたび出てきますが、実はこれが重要な伏線でした。

事の真相(麻衣の魂胆)を知った康之のショックは相当なものです。
自分がその立場なら、数時間前に戻って自分を止めたいと強く願ったでしょう。

まさに絶望のどん底。
麻衣(沙織)さんって、本当に恐ろしい…。

 

今回もまんまとしてやられました。

海原さんはなぜ消えたのか?
殺していいと言われていた指名手配犯を、なぜ犯人が分からないようにして殺したのか?

その原因は、海原さんの亡くなった息子さんでした。

 

麻衣(沙織)は楽園の住民として出れなくなってしまったわけですが、(あるとすれば)4作目はどのように出すのか?

早くも気になります。

 

スマホで見る「ネタバレ解説ページ」

今回、ハードカバーで呼んだのですが、ネタバレ解説ページにとぶQRコードがありました。

最後に殺された被害者の名前と場所をローマ字で入力することで読める特別ページ。

「箱舟」「十戒」にも触れた内容で読み応えがありました。
文字を反転して読ませるのも凝っています。



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