雨降山大山寺(読み方はあぶりさんたいさんじ)は関東三十六不動霊場の一番札所であり、関東三大不動の一つです。
また、聖武天皇の勅願寺であり、弘法大師・空海が第3世住持を勤めた古刹でもあります。
もともと大山阿夫利神社・下社がある場所に鎮座していましたが、明治の神仏分離によって現在地に。
大山阿夫利神社の下社は標高696m、雨降山大山寺は標高512mの場所にあり、女坂からの参拝、もしくは大山ケーブルカーの中間にある無人駅「大山寺駅」から行けます。
目次
・歴史
・ご本尊とご利益
・十一面観世音菩薩(平和観音像)と幸福の鐘
・石段
・弘法大師堂
・本堂
・宝篋印塔
・鐘楼
・かわらけ投げ
・法現稲荷社と天狗祠
・倶利伽羅の滝と倶利迦羅竜王
・もみじ祭り
・御朱印とお守り
・護摩祈祷
・石彫羅漢修行尊
・アクセス
・主な行事・お祭り
・大山阿夫利の案内
雨降山大山寺の歴史
755年(天平勝宝7年)、奈良の東大寺を開いた良弁僧正によって開山。
山号は雨降山。
大山寺は「大山不動さん」とも呼ばれており、父母の孝養のために建立されました。
行基菩薩の高弟・光増和尚が良弁僧正を継いで大山寺二世となり、大山全域を開き、山の中腹に諸堂を建立。
大山寺第三世の弘法大師によって数々の霊所が開かれ、大山七不思議と称される霊地信仰が確立されました。
修験道として栄え、戦国時代には後北条氏に与し僧兵として活躍。
江戸時代以降は、高野山を頂点とする真言宗の学問の山として再整備され、大山詣りにより栄えました。
ところが明治に入ると、明治政府は江戸幕府が厚く保護した仏教寺院を否定していたことから神仏分離を実施。
廃仏毀釈によって本堂伽藍をことごとく破壊されます。
ご本尊の鐵不動明王だけは地元住民の信仰からも山外退去を免れ、現在地に本堂が再建の後に遷座。
跡地には、大山阿夫利神社下社が建設。
そして2024年、再建された本堂が国登録有形文化財に指定されました。
雨降山大山寺のご本尊とご利益
ご本尊は大山不動像。
わけ隔てなく現世の悩みや苦難を助けてくださる仏様です。
江戸時代には、春日野局が家光が将軍になることを大山不動に祈願。
してその願いが叶ったことから、 徳川家光によって手厚く保護されていました。
また、廃仏毀釈でお不動様を破壊しようとした暴徒が本堂におしかけた時には、お不動様の形相がまさに血も凍るような恐ろしい形相に一変。
余りの恐ろしさにだれひとり手を触れることができなかった…なんて話もあります。
1264年(文永11年)に願行上人が鋳造し、像高97.9cm、総高287cm(8尺7寸)で、その重量は130貫(約480㎏)と大きく、その眼光と威圧感で実際よりも大きく見えます。
ご開帳は毎月8日、18日、28日。
雨降山大山寺の十一面観世音菩薩(平和観音像)と幸福の鐘
大山ケーブルカー「大山寺駅」からも行けます。
十一面観世音菩薩は世界平和を祈り建立され、幸福の鐘は昔の習わしから。
昔は大山を男神、江ノ島を女神と見立てていたことから、大山詣りと江ノ島詣りをした後に精進落としをするのが主流でした。
そのため、片方しか参拝しなかった場合は「片参り」と。
その由来から、大山寺は江ノ島の見える場所に「幸福・恋結びの鐘」を建立。
恋愛成就や縁結び、厄除招福(幸福)、(平和観音様の)子宝成就、安産、火難除けなどのご利益があると言われています。
ちなみに、恋人同士でなら一緒に紐を持って海に向かって3回、願い事を心の中で念じながら鳴らします。
幸福成就は平和観音様に向かって7回。
鐘を鳴らした時、まだ大山寺の総本尊くろがね不動明王様に参拝していない場合は、必ず参拝します。
雨降山大山寺の石段
十一面観世音菩薩と幸福の鐘から大山寺に続く道には、苔むしたお地蔵様が。
橋を渡った先は二手に分かれており、どちらに行っても大山寺には行けますが、石段を上るなら下手から。
もみじの木が覆いかぶさるように並ぶ石階段。
夏は深緑がまぶしいくらいにきれいで、秋には真っ赤な紅葉がきれいな名所です。
そして、階段両脇には三十六童子像、階段中央の石灯籠。
表情・格好もさまざまな童子は見ごたえがありますが、階段が急なので気を付けて鑑賞です。
奥の方には仏様?
雨降山大山寺の弘法大師堂
階段を上って右側にある弘法大師堂は、もともとは左側に建立されたものの、宝篋印塔の再建で現在地に。
内部には、九十三体のお大師小像が置かれています。
雨降山大山寺の本堂
明治の廃仏毀釈で本堂伽藍は破壊されましたが、全国の信者たちの浄財やケヤキの大木の寄進によって9年かけて再建。
本堂周辺に彫られた数々の彫刻は素晴らしいです。
向拝の軒唐破風の下に蟇股、滝に打たれる修行僧。
木鼻には不動明王の化身である龍(倶利伽羅龍王)が彫られ、向拝の柱にも巻き付くように龍が彫られているなど、細部まで見逃せません。
本堂の左側、手水舎と厄除の谷(幸福の谷)の向かいには地蔵尊と厄除祈願所。
雨降山大山寺の宝篋印塔
1795年(寛政7年)に旧大山寺境内に建立。
1914年(大正3年)に現境内に再建。
精巧な青銅造りの宝篋印塔は高さ約11m。
香花を供えて右回りに3度回ると願い事が叶うといわれています。
雨降山大山寺の鐘楼
徳川家光が梵鐘は奉納していましたが、廃仏毀釈で破壊。
銘文「大檀那従一位左大臣源家光公」の部分のみが、阿夫利神社々社務局に保存されています。
現在の鐘は、1949年(昭和24年)に賛助者によって奉納されたものです。
雨降山大山寺のかわらけ投げ
大山寺開山1250年記念として始まった「かわらけ(土器)投げ」は、土に戻る素材で作られた直径6cmの天下ぼしの土器を投げておこなう厄除けです。
厄除の谷(幸福の谷)に向けて投げるだけでも厄除けのご利益があると言われていますが、がけ下に設置された茅の輪(福輪)をくぐれば幸運をもたらすとされています。
雨降山大山寺の法現稲荷社と天狗祠
法現稲荷社、六遣塚、天狗祠と並んでいます。
法現稲荷社の神明鳥居には「稲荷大明神」の扁額。
社の中には吉祥宝来(切絵)でしょうか?
相模大山の大天狗と言われる「伯耆坊」を祀った祠。
大天狗は1868年(明治元年)の廃仏毀釈までは、大山山頂に石尊大権現とともに祀られていたそうです。
新しく整備中なのでしょうか?
雨降山大山寺の倶利伽羅の滝と倶利迦羅竜王
鐘楼の奥には倶利伽羅の滝と倶利迦羅竜王。
池の前にある木札には「不動明王 倶利迦羅竜瀧」と書かれています。
大山の川の水は冬は冷たいですが、大山の湧水ならば通年温度が一定。
だから錦鯉も育つのか、ゆうゆうと泳いでいました。
本堂の前立不動明王の前には、龍(黒龍)が利剣に絡み、その利剣を剣先から呑み込もうとしている像があります。
黒龍は不動明王が右手に持つ利剣の象徴、すなわち不動明王の化身。
そのため、倶利伽羅竜王(倶利伽羅不動尊)と呼ばれています。
雨降山大山寺のもみじ祭り
本堂前の参道周辺は、紅葉の名所として有名。
秋になるともみじ祭りが盛大におこなわれ、大山阿夫利神社・下社も含めてライトアップされることからも多くの人が訪れます。
例年11月初旬から色付きはじめ、見頃は11月中旬から下旬にかけて。
昼間は秋の青空に映える黄色や赤色の紅葉の美しさ。
夜は夜景と燃えるような紅葉が楽しめます。
雨降山大山寺の御朱印とお守り
御朱印は本堂でいただけます。
また、源頼朝公が戦勝祈祷に太刀を大山寺に納めたことから始まった「納め太刀 迎え太刀」や梵字お守ストラップ、吉祥宝来(切絵)、もみじ型ステッカー交通安全お守、腕輪念珠、五色五方守護御幣など多数のお守りも。
郵送も受け付けています(郵送料は別途実費、宅配便も可)。
雨降山大山寺の護摩祈祷
弘法大師により伝えられた真言密教秘伝の修法、護摩祈祷で有名。
古来鉄造不動明王の御前で、護摩木(煩悩の象徴とされています)を米・お香・漢方薬・油などといっしょに燃やすことで厄や災いを払い、願いが成就するように祈ります。
お護摩祈祷のお申込は電話で受け付けており、遠方など直接お寺にこれない場合には、護摩祈祷を行った後御札を送ってくれます。
また、2月の大祭では、もともとは天皇家の大事にのみ行われた修法・五檀護摩修行をおこなっています。
五檀護摩修行は、本堂5つの護摩壇全てに火を入れ、その燃え上がる聖火で願主の願いを加持祈念。
智(利)剣と智火をもって煩悩を断ち、貪・瞋・嫉の三毒を焼き尽くして心願願望成就のご利益をいただきます。
雨降山大山寺の石彫羅漢修行尊
五百羅漢ご奉納ができます。
自分で彫る(ご奉納料6万)、もしくはプロの石工に彫ってもらう(ご奉納料8万)の2通りとあります。
雨降山大山寺の詳細
雨降山大山寺へのアクセス
- 小田急小田原線伊勢原駅北口からバスで約30分、大山ケーブルカー乗り場まで徒歩15分、大山ケーブル駅から大山寺駅下車徒歩3分
- 公式サイト:https://oyamadera.jp/
雨降山大山寺の主な行事・祭り
- 1月:元朝大護摩供修行、厄除祭、初不動護摩供修行
- 2月:厄除護摩供修行、星祭大護摩修行結願御開帳、五檀護摩供修行(大祭)
- 3月:宗祖弘法大師忌法要
- 4月:春山花祭、中興願行上人忌法要
- 5月:不動護摩供修行
- 7月:夏山祭り御開帳
- 8月:盆山登拝御開帳
- 9月:不動護摩供修行
- 11月:開山良弁僧正忌法要、もみじ祭御開帳
- 12月:星祭転変厄除延命祈祷会修法、納め不動、除夜の鐘
- 毎月:8・18・28日ご開帳
大山阿夫利の案内
大山阿夫利神社(下社) | ケーブルカーで来れる山中の神社。晴れた日には、鳥居から遠く江ノ島までの眺めは最高です。 |
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大山名水神泉 | 大山阿夫利神社境内にある名水。水は汲んで持って帰れます。 |
登拝門 | 大山阿夫利神社の本社に続く門。しっかりとした登山スタイルの準備が必要です。 |
売店・茶屋処さくらや | 大山阿夫利神社にある昔ながらのお茶屋さん。オープンスタイルで甘味も人気。 |
大山 参集殿 洗心閣 | 山荘のような造りの休憩所。軽食も用意されています。 |
茶寮 石尊 | テラス席からも眺めも最高な茶屋。おしゃれな店内で甘味やドリンクをいただきます。 |
茶湯寺(涅槃寺) | 亡くなった方の霊を百一日の茶湯で供養する「百一日参り」のお寺です。数多くの石仏があり、釈迦涅槃像が有名です。 |
駐車場・こま参道・ケーブルカー | 伊勢原駅よりケーブルカー乗り場まで、多数の神社が散在しています。 |