目黒にある浄土宗のお寺、蟠龍寺(読み方はばんりゅうじ)。
正式名称は「霊雲山蟠龍寺」で、ご本尊は阿弥陀如来。
お堂の隣には岩窟の弁天堂があり、弁財天が祀られています。
通称「岩屋弁天」と呼ばれる、山手七福神の一神です。
弁財天は芸能・芸術などを司る神様であり、住職ご自身も学生時代にバンド活動をされるなど音楽活動をおこなっていたことから、境内には音楽スタジオ「蟠龍寺スタジオ」が完備されています。
目次
・歴史とご本尊
・参道
・蟠龍寺スタジオ
・寺務所
・本堂
・岩窟弁天堂
・辯天堂
・おしろい地蔵
・アクセス
・近くにある神社・寺
蟠龍寺の歴史とご本尊
蟠龍寺は、慶安年間に創建。
もともとは行人坂下、目黒雅叙園付近にあった称明院(しょうみょういん)という小庵でしたが、霊雲上人(れいうんしょうにん)によって1709年(宝永6年)に現在地に。
名称も霊雲山蟠龍寺に改称されました。
「蟠龍」とは、「とぐろを巻いて力を蓄える龍」という意味があるのだそうです。
1794年(寛政6年)に律院となり、天明年間に東都三番札所に。
蟠龍寺で祀っている御本尊は、木像阿弥陀如来像(東京都の重要文化財)と善光寺式三尊像。
かつては「目黒大仏」と呼ばれた阿弥陀如来像がありましたが、明治時代の廃仏毀釈によって1871年(明治4年)にフランスに流出。
現在はパリのセルヌスキー美術館に所蔵されています。
蟠龍寺の参道
山手通り沿い、立ち並ぶ住宅の間にある参道。
車も余裕で通れる道幅で、奥の蟠龍寺に続いています。
途中、緑に囲まれた石段の参道。
石段の脇には「不許辛肉酒(しんにくしゅ)入山門」の結界石があり、これは「しんにくしゅ、山門に入るを許さず」。
その訳すところは、ニラやニンニクなどの匂いが強い野菜や肉などの生臭物、酒を飲んだ者は山門に入ることを禁止する…です。
その奥には「江戸裏鬼門鎮守」「安永四年」と彫られた岩屋辯財天の石碑。
これが江戸最初の山手七福神と呼ばれる所以となっています。
ちなみに、山手七福神は江戸城裏鬼門を守るために創立された守護神です。
蟠龍寺の蟠龍寺スタジオ
石段を上った先には右手に駐車場、そして左側に蟠龍寺スタジオ。
リハーサルや簡単な録音、CD制作などが出来るそうです。
特にアナログ録音の音楽制作に向いているそうで、ジャズトリオや声楽、映画音楽や展示音楽、TV番組用、お経などの録音に利用されているのだとか。
蟠龍寺の寺務所
緑に囲まれた細い参道には寺務所。
御本尊や七福神の御朱印、七福神ダルマのおみくじなどを授与しています。
蟠龍寺の本堂
本堂前には池があり、本堂への参道には石橋が掛かっていました。
蟠龍寺は浄土宗の中でもお坊さんの集団内でのルールを重視する律院(りついん)だったことからか、本堂は修行道場を思わせる質素な造り。
お堂の天井には、2020年(令和2年)に奉納された龍の絵が描かれています。
ご本尊の阿弥陀如来さまは胸に卍(まんじ)を刻む、修業する人と阿弥陀様が一対一で向き合う座り姿。
立ち上がれば人と同じくらいの背丈になるぐらいなんだそうです。
お堂が建つよりも前からあったとされる仏像で、浄土宗の宗祖・法然上人(ほうねんしょうにん)の時代に作られたとされています。
蟠龍寺の岩窟弁天堂
本堂に向かって右手の奥には、石像弁財天像(八臂弁財天)が鎮座する岩窟があります。
もともとは土の素掘りの洞窟だったそうで、光が届かない奥深くに水が湧き出し、そのほとりに辯才天が祀られていたそうな。
伎藝(ぎげい)の神様ということで、ミュージシャンの方が多く参拝されているそうです。
蟠龍寺の辯天堂
岩窟弁天堂の近くにある辯天堂には、木製の弁財天(八臂の天女像)が祀られています。
岩屋辯才天の御本体に代わる「御前立(おまえだち)」。
他にもさまざまな奉納物を納めており、使い終えた三味線のバチや折れたドラムスティックのお焚き上げ供養などの依頼もあるそうです。
ちなみに、お正月の特定の期間中は御開帳されているそうです。
蟠龍寺のおしろい地蔵
関東大震災で、浅草にあった欣浄寺(ごんじょうじ)から被災したお地蔵様。
「おしろい地蔵」と呼ばれるこちらのお地蔵様は願掛けによりお顔がかけたような、のっぺり顔になっています。
それに関して伝わる話が以下。
昔、顔の痘痕(あばた)が原因で結婚ができずに悩んでいた娘さんがこちらのお地蔵さまに願掛けしたところ、痘痕が消えて幸せな生涯を過ごすことができました。
その話から若い女性がお参りに来られるようになり、江戸時代には歌舞伎役者の方も参拝。
歌舞伎役者の方が使っていたおしろいには鉛が含まれており、その害に悩んでいたからです。
願掛けでおしろいをお地蔵様のお顔につけていたことから、お地蔵様のお顔がかけたようになってしまっているのですね。
願掛けのやりかたは、まずお地蔵さまにおしろいを塗り、その余りを自分の顔に塗って祈願。
さすれば肌が美しい美人になると、美肌の御利益があるそうです。
今でもこの願掛けをされる方もいるそうで、時代は変われども女性の願いは変わりません。
蟠龍寺の詳細
蟠龍寺へのアクセス
- 各線:目黒駅より徒歩13分
- 東急目黒線:不動前駅より徒歩13分
蟠龍寺近くのおすすめ神社・寺
大圓寺 | 行人坂の途中にある寺院。たくさんの仏像群、七福神と見ごたえあり。 |
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五百羅漢寺 | 近代的な外観のお寺。十数年かけ作り上げた仏像彫刻を拝観できる、仏様のミュージアム。 |
泰叡山護國院瀧泉寺(目黒不動尊) | 目黒不動として有名な天台宗寺院。水かけ不動明王や、お堂の後ろも忘れずに参拝したいところ。 |
瀧泉寺三福堂 | 目黒不動尊の境内の近く、元祖山手七福神の恵比須様や大黒天、弁財天を合わせて祀るお堂。 |