日本三大弁財天を奉る江島神社を構成する一社である辺津宮(へつみや)は、江の島にきて最初に参拝する神社。
江の島は高低差があることからも、江ノ島弁天橋を渡るところから青銅鳥居と瑞心門が見えてきます。
また、辺津宮は一番下に位置することからも下之宮とも呼ばれ、神社でのご祈祷は主にこちらでおこなわれています。
航海や旅の女神さまを祀るだけでなく、日本三大弁財天や白い巳さま、銭洗白龍王、杉山和一検校と、ご利益のあるパワースポットが目白押し。
さらに、江の島で頂ける各神社の御朱印もこちらに揃っています。
目次
・ご祭神とご利益
・行き方
・青銅の鳥居
・瑞心門
・杉山検校の福石・石柱・像
・社殿
・銭洗白龍王
・奉安殿
・境内社(八坂神社・稲荷社・秋葉社)
・むすびの樹
・社務所と御朱印
・アクセス
・主な行事・お祭り
・江ノ島にある神社・寺
・江ノ島のおすすめグルメ
江島神社・辺津宮のご祭神とご利益
聖徳太子よりも少し前の時代。
仏教が公伝され、日本固有の神道と外来の仏教が共に大事にされていた当時、欽明天皇の勅命で島の洞窟(岩屋)に神様を祀る江島神社が創建されました。
日本三大弁財天を奉る江島神社は、三人姉妹の女神様をご祭神にしています。
田寸津比賣命(たぎりひめのみこと)を祀る辺津宮、市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)を祀る中津宮、多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)を祀る奥津宮の三女神の総称。
もともとは江島明神(えのしまみょうじん)と呼ばれていましたが、仏教との習合により弁財天女とされ、江島弁財天として信仰されるようになりました。
弁財天信仰は、もともとはインドの水の神・サラスバティーという神様から。
大陸を渡った後日本に伝承し、仏教との習合もあり弁財天如となり、江島弁財天として信仰されるように。
海の神、水の神の他、芸能上達、音楽、福徳財宝の功徳を持つ神様として仰がれています。
江戸時代には、江島弁財天への信仰が庶民の間でも盛んになり、江の島詣の人々で賑わっていました。
田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)をお祀りする辺津宮は、1206年(建永元年)に将軍・源實朝(みなもとのさね)が創建。
1675年(延寶3年)に再建し、1976年(昭和51年)に大改修されています。
田寸津比賣命は航海の女神様で、航海を始め旅の安全のご利益があるといわれています。
江島神社・辺津宮の行き方
最寄駅は小田急江ノ島線片瀬江ノ島駅。
弁天橋を渡った先、右側の地下道を通ると江の島弁天橋に。
江の島弁天橋(全長389m)からは青銅鳥居と瑞心門が見えます。
橋が架かるまでは、干潮時に現れた陸路を歩いて参拝していましたが明治時代に木橋が架けられ、1964年(昭和39年)に現在の橋が完成しています。
江島神社・辺津宮の青銅の鳥居
江の島弁天橋を渡った先には、江島神社の入口となる青銅の鳥居。
1747年(延享4年)に建てられた際には木製でしたが、1821年(文政4年)に再建した際には青銅製に。
柱には再建に尽力した人々の名前が刻まれています。
江の島道では三の鳥居になり、遊行寺前の一の鳥居、洲鼻通りにある二の鳥居は現在はありません。
正面の額「江島大明神」は、鎌倉時代の文永の役(蒙古襲来)に勝利した際、後宇多(ごうだ)天皇から神恩感謝として贈られた勅額の写し。
特徴的な筆跡は弁財天のお使いである蛇をかたどっています。
江島神社・辺津宮の瑞心門
青銅の鳥居の先には、辺津宮につづく坂道の参道。
江戸時代から変わらない幅1.5間(約2.75m)の参道にはお店や旅館が並び、常に多くの人で賑わっている江の島弁財天仲見世通りです。
参道を通り抜けた先には鮮やかな朱色の鳥居。
左側にはエスカー乗り場(1区)と、児玉神社に続く階段があります。
鳥居の正面、石段を上ったところには龍宮城を模した楼門「瑞心門(ずいしんもん)」。
壁や天井には、片岡華陽が描いた牡丹や唐獅子の絵画が飾られています。
この唐獅子はご祭神の守護と参拝者に厄災がふりかからないようにと祈願されたもの。
門を通った正面には、江島神社ご鎮座1450年を記念して奉献された弁財天童子石像があります。
江島神社・辺津宮の杉山検校の福石・石柱・像
瑞心門から石段を上った曲がり角ところには、三重県の伊勢出身の杉山和一(検校)にまつわる福石や石柱、石像などがあります。
杉山検校は幼少時の病から失明してしまったのをきっかけに、鍼の道を志した人物。
福石は、杉山検校が江の島にこもり21日間の断食をして鍼の技術上達を祈願した帰り道につまづいた石。
倒れ気を失った時に見た夢の中に弁財天が現れ、目が覚めたら松葉の入った竹の筒を授かった…という伝説の石です。
これをもとに和一は、管鍼術を考案し江戸で開業。
その腕前で、将軍・徳川綱吉の病を治し、関東総検校の地位を与えられています。
1694年(元禄7年)に亡くなり、お墓は弥勒寺(東京都墨田区)にありますが、ゆかりのある江の島に笠塔婆型の墓が建立されました。
墓の前の灯籠は、綱吉の側近・柳沢吉保室が寄進したものといわれています。
福石のそばにある石柱は、参詣者が道に迷わないようと杉山検校が建立した48基の道標のひとつ。
道標は藤沢宿から江の島まで約5kmの参道に設置されたのですが、現存するのは14基のみ。
道標の正面には「ゑのしま道」、側面には「一切衆生」「二世安楽」と刻まれています。
そうした行いからも、祀られている像には心願成就、病気平癒、学業成就、芸能上達、鍼灸按摩学術向上のご利益があると言われています。
身体の気になるところと同じ部位に触れるといいそうです。
また、この地で物を拾い弁財天にお参りすると福を授かれると言われています。
江島神社・辺津宮の社殿
権現造りの社殿。
屋根には江島神社の社紋「向かい波三つ鱗」が見られます。
社紋は北条家の家紋「三枚の鱗」の伝説にちなんで考案されたもので、「向い波の中の三つの鱗」を表現しています。
「三枚の鱗」の伝説とは、1190年(建久3年)に鎌倉幕府初代執権の北条時政が、子孫繁栄を願うため江の島の御窟(現在の岩屋)に参籠した時の事。
満願の夜に弁財天が現れ、時政の願いを叶えることを約束すると大蛇に姿を変えて海に。
後には3枚の鱗が残されたことから、時政はこれを家紋にしたと言われています。
また拝殿には、1959年(昭和34年)に地元商店によって奉納された、相模彫りと言われる独特の彫り物がされた巾着形の賽銭箱が。
お賽銭を入れると音が出る仕組みなんだとか。
江島神社・辺津宮の銭洗白龍王
エスカー(1区)の降車口であり、辺津宮社殿の正面には銭洗白龍王。
手前にはお金を清めるためのザルが完備されており、こちらでお金を清めると金運アップのご利益があるといわれています。
龍の足元には賽銭箱があるのですが…なかなか入れるのは難しそうです。
池の中にたくさんの小銭が沈んでいますが、これはおそらく(いや確実に?)挑戦した結果でしょうか…。
江島神社・辺津宮の奉安殿
八角のお堂の奉安殿(ほうあんでん)には、日本三大弁財天の八臂弁財天(はっぴべんざいてん)と裸弁財天の妙音弁財天(みょうおんべんざいてん)が祀られています。
八臂弁財天は勝運の神様、妙音弁財天は音楽・芸能の神様です。
ちなみに、日本三大弁財天の残り2つは安芸の宮島と近江の竹生島の弁財天。
八臂弁財天(国指定重要文化財)は鎌倉時代初期に作られ、源頼朝が鎌倉幕府を開くとき、奥州藤原秀衡調伏祈願のため、文覚上人に命じて江の島に勧請せしめ、21日間祈願させたことが「吾妻鏡」にも記載されています。
妙音弁財天(藤沢市指定重要文化財)は琵琶を抱えた座像で、その姿から裸弁財天とも言われています。
女性の象徴をすべて備えた珍しい姿で、鎌倉時代中期の傑作とされています。
奉安殿には他にも、弁財天への取次や功徳の下達・給仕などの補助役を務める侍童神「十五童子像」や、尼将軍・北条政子が奉納した「神代八花鏡」、弘法大師が御岩屋に参籠しておこなった護摩修法の灰で造った「護摩灰弁財天像」、鎌倉時代の蒙古来冠退散の報賽として奉納された「後宇多天皇勅額」など多数の収蔵品を拝観できます。
また、ここ奉安殿には「白い巳(みぃ)さま」がいます。
奉安殿の入り口付近には「一文字願立ての白い巳さま」があり、強い願いを一文字だけ巳さまに記入しお供えすると願いが叶うと言われています。
江島神社・辺津宮の境内社(八坂神社・稲荷社・秋葉社)
八坂神社は、奉安殿の隣にある江島神社の末社。
ご祭神は建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)で、その御木像を御神体にしています。
建速須佐之男命は疫病をはじめとするあらゆる災難からお守りくださる神様で、江島神社の三女神の父神でもあります。
もともとは対岸の腰越に祀られていたのが、大波で流され御窟前の海中に沈んでいたのを漁師が発見。
江ノ島に祀られました。
江戸時代には天王社として祀られていましたが、1873年(明治6年)に「八坂神社」に改称。
7月におこなわれる八坂神社の例祭「神幸祭」は、神輿の海中渡御や天王囃子など江の島をあげておこなわれる一大祭事。
湘南唯一の夏祭りとして有名です。
八坂神社の隣には、稲荷社・秋葉社。
豊受気毘賣命(とようけひめのみこと)、火之迦具土神(ほのかぐつちのかみ)が祀られています。
秋葉稲荷・与三郎稲荷・漁護稲荷など、江の島随所にあった小祀を合祀したお社で、江戸時代は火事が多かったことから祀られたそうです。
江島神社・辺津宮の「むすびの樹」
八坂神社・稲荷社・秋葉社の向かいには、良縁を招くとされている辺津宮のご神木「むすびの樹」があります。
2本の幹が1つの根から広がっていることから「むすびの樹」と命名。
むすびの樹をぐるりと囲むように、「良縁成就」のピンク色の絵馬がかけられています。
江島神社・辺津宮の社務所と御朱印
社務所は辺津宮の右側と左側にあり、守札の授与、ご祈祷やご朱印の受付をおこなっています。
御朱印は右側、奉安殿と八坂神社の向かいにあるところをメインにしているようです。
種類がたくさんあり、御朱印によって直書きと書置きと異なります。
江島神社・辺津宮の詳細
江島神社・辺津宮へのアクセス
- 小田急江ノ島線:片瀬江ノ島駅より徒歩18分
- 江ノ島電鉄:江ノ島駅より徒歩22分
- 公式サイト:http://enoshimajinja.or.jp/
江島神社の主な行事・お祭り
- 1月:歳旦祭、元始祭、昭和天皇祭遥拝式、秋葉神社例祭
- 2月:節分祭、紀元祭、稲荷社初午祭、祈年祭、天長祭
- 3月:貝祭、春季皇霊祭遥拝式
- 4月:神武天皇祭遥拝式、初巳例大祭、昭和祭
- 5月:杉山検校祭
- 6月:夏越大祓式
- 7月:海開き、七夕祭、八坂神社例祭、八坂神社神幸祭
- 9月:龍宮例祭、秋季皇霊祭遥拝式
- 10月:古式初亥祭、神嘗祭遥拝式、神嘗奉祝祭
- 11月:明治祭、七五三祈願祭、新嘗祭
- 12月:師走大祓式、除夜祭
江ノ島にある神社・寺
江島神社・中津宮 | 鮮やかな朱色の社殿。龍の泉と水琴窟、江戸歌舞伎市村座ゆかりの品があります。 |
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江島神社・奥津宮 | 源頼朝寄進の石鳥居の先にある神社。拝殿天井の「八方睨みの亀」の模写、隣の龍宮は要チェック。 |
江の島岩屋 | 手燭を手に見学する雰囲気ある洞窟。石の彫像と小さな神社がある、江島神社の発祥地です。 |
江の島大師 | 鹿児島・最福寺の関東別院。誰でも自由に参拝でき、高さ6mの赤不動像があります。 |
児玉神社 | 陸軍大将・児玉源太郎をお祀りする神社。明治日本の技術遺産である28センチ榴弾砲の砲弾があります。 |
聖天神社(聖天上人像社) | もとは小島。鎌倉時代の僧・良真上人の像が安置されるお社・龍宮神・道祖神が鎮座しています。 |
江ノ島のおすすめグルメ
遊覧亭 | 昔ながらのレトロな雰囲気のお食事処。価格帯もリーズナブルで、メニューも充実。 |
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